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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
七国統一編
1223/1591

14-14 預けちゃった


つわものが、人が足りない。


いくさ、戦で多く失い、生き残りは瘦せ細った子だけ。動けるのは少ない食べ物を子に与え、そのまま弱って死んでしまうから。






「このままでは、いつまでっても。」


耶万やまが憎い。ずっと前から仕掛けているが、そのたびに兵を失う。


「あの地は諦めたのに。」


中の東国ひがしくに、霧雲山の統べる地。山の奥深くに在るが、水が多くて豊か。


「はぁ。」






あの地に仕掛ければ、いや仕掛けようとすれば死ぬ。


これまで多くの大王おおきみが、酷く苦しみながら死んだ。だから手を出せない。



四つ国は、舟が無ければ戦えぬ。南国みなのくにと中の東国は、山を越えれば何とか行ける。だから仕掛け続け、足りなくなった。



南から津久間つくまおそれ山、斑毛まだらげ山の統べる地。


畏れ山は獣に守られ、食い殺される。斑毛山は越道こしみち山、津久間は大貝山と結んでいるのだろう。


仕掛けても仕掛けても押し戻され、残されるのはむくろの山。



中の東国を奪うなら、その前に真中まなか七国ななくにを一つに。


兵を纏め、ドッと仕掛けなければ勝てん。ソレだけの事。なのだが、七つの国を纏める事など出来るのだろうか。






「申し上げます。耶万に組み込まれた国の生き残りが、耶万との戦いに勝てる道を知っていると。」


「ナニッ。」






王やおみと顔見知りでもナイのに、破落戸ごろつきが大王に会えたのは皆、口がうまいから。欲しい言葉を欲しい時に、おのの正しさを信じて疑わず発するから。


悦のモウにうねのサゴ、大野のゴズ、光江のカンも安のゴリも乗せるのがウマイのだ。



耶万を落とせば強い国守、祝が手に入る。


大貝山を落とせば霧雲山まで直ぐ。霧雲山を落とせば、耶万のソレより強い国守や祝を動かせる。そうなれば真中の七国を纏め、一つにする力を得たのと同じ。


『王の中の王』に、『やまとを統べる王になれる』とささやかれ、に受けてしまった。






「兵を預けよう。」


「ハッ。」






預けちゃったよ。口車くちぐるまに乗っちゃったよ、大王が。それなりに戦える若いのを、いろいろ持たせて。



ゆかりの者がドロンとした目で、姿が見えなくなるまで見送った。残されるのは幼子おなさご、預かるのは年寄り。


戻れない、生きて会えない。なのに大王はゴキゲン。






「ハッハッハ。王に、王の中の王になれる。耶万を落とし、大貝山を落とし、霧雲山の統べる地を」


グラッ。


「大王、少し休まれては・・・・・・。」


大王の手からつきが落ち、酒を吸った地から甘い香りが広がった。


「毒ぅ?」


転がった杯を拾い上げた大臣おおおみがグワングワンして、頭からバタンと倒れる。


「ヒッ。」


大王と共に祝杯を上げていた臣の一人が、火に酒を掛けてしまった。その数秒後。


「グルジイ。」


大王のたちに毒霧が広がり、のた打ち回る。


杯を置かずに落とすから、勢い良く落とすからドンドン濃く、深くなりバタバタ、バタン。






仕掛けたのはいわおの祝に仕える隠密集団、毒嵓どくら。毒殺と瞬殺を専門とする通称、毒忍びがスッと姿を消した。


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