14-13 破落戸、大集合
真中の七国で、長く生きる大王は少ない。
鎮の西国や中の西国に仕掛けても変わらないのに、南国や四つ国に仕掛けると病になる。
中の東国に攻め込もうとすると死ぬか、毒を盛られて殺されてしまう。
生き物は人も獣も、いつか死ぬ。けれど殺されるのは嫌だ。
誰だって怖い、恐ろしいと思うモノ。
「ワシら二人じゃ、どうにもナランと思うがな。」
「そう言うなよ、ゴズ。」
サゴがグイっと顔を近づけた。
「他はアレだが倭国、飛国はイケルと思うぜ。」
大野のゴズと采のサゴが大磯川の東で落ち合い、どうすれば耶万を落とせるのか話し合った。
二人の狙いは食べ物でも子でもナク、強い力を生まれ持つ祝。
耶万に組み込まれ、盛り返せた国には強い国守や祝が居た。ソレを攫い、連れ帰れば耶万との戦に勝てる。
そう考えて。
「王は増えても大王は同じ。」
ゴズがニヤリ。
「それでも仕掛ける。」
サゴもニヤリ。
悦、采、大野、光江、安は耶万との戦に破れ、組み込まれた。
弱かったから負けたんじゃ無い。耶万には多くの祝が居たから、強い力を持っていたから勝ち続けたダケ。そう思い込み、生きている。
「待たせたか。」
安のゴリが遅れて到着。
「気にするな。」
サゴに言われ、苦笑い。
「お、来た来た。」
ゴズが嬉しそうに、川下へ手を振る。
ゴズとサゴは安、悦、光江のゴロツキにも声を掛け、大王を唆すにはドウすれば良いか話し合う事にした。
力を合わせて動かなければ、王や大王を踊らせられない。
「よぉ、久しぶり。」
悦のモウが手を振りながら近づく。
「待ったか。」
光江のカンがニヤリ。
悦、采、大野、光江、安の破落戸、大集合。
議題は真中の大王をドウ唆すか。兵をドコに打つけ、戦わせるか。
「近海と大浦は耶万を蹴散らした大国。仕掛けたら負ける。」
カンが言い切る。
「加津と千砂、腰麻にもバケモノが居る。ドッと仕掛けなけりゃ勝てねぇよ。」
モウが続けた。
「早稲と風見は耶万から引いた。耶万が万十、氛冶に頼る前に祝を奪えばコッチの勝ち。」
ゴリがグフフと笑う。
「松毒や耶万の夢より弱いが、七国の毒もイケルぜ。」
サゴがスッと目を細め、ニヤリ。
「戦を仕掛ける前に松田、いや浦辺に集まろう。兵を休ませてから仕掛けるんだ。」
ゴズが胸を張る。
話し合いの末、サゴは駒国と倭国。ゴリは笠国。ゴズは飛国と保国。モウは瀬国、カンは剛国の大王を口説く事になった。
駒国と倭国は中の東国に、飛国と保国は耶万に仕掛けたがっている。どちらかを落とせば、スンナリと話が纏まるだろう。だから二国、掛け持つ。
五人とも昔の話、言い伝えを知っている。けれど軽く考え、真中の七王に兵を出させようと動き出す。