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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
七国統一編
1220/1591

14-11 下を向かないで


驚きはシナイわ。でもね、言わせて。


りないわね。」


「へ。」


何なのよ、もう。そんなに耶万やまが憎いの?


いくさを仕掛けて攻め込んで、アッサリ負けて滅ぼされた。社を通して、そう聞いたわ。だからまことよ。


「流しちゃって。」


「はい。」


言伝の岩には、多くの社憑きが控えている。許し無く人のときに留まり、罪を犯したおにを根の国へ送るために。


「助けっ。」


ドコに流されるのか知らない。けれど死んでも。隠になっても苦しむのは嫌だ。






猿轡さるぐつわめられ、ズルズル引き摺られ、着いたのは岩のほら。その奥に川が、ドドドと流れる川があった。



「ンムグ。」 イヤダァ。


芋虫のようにウゴウゴしても、思うように動けない。ココから逃げなければドブリと放り込まれ、ドドドと遠くへ流されるだろう。


「この川はな、根の国に繋がっている。暴れればソレだけ、長く苦しむ事になるゾ。」


そんな・・・・・・エッ、待って。


「ソォレ。」


二妖掛かりで放り込まれ、背中からドブン。もの凄い勢いで流され、滝壺でグルグルぐるり。






大祓おおはらえが執り行われる前に入り込んだ、隠や妖怪の裁きが終わった。畏れ山、霧雲山、神成かみなり山に送られたのは、その多くがザッと流される。


今も裁きを受けているのは、乱雲山に送られたヤツら。



「多いね。」


祝社はふりのやしろから乱雲山に送られた数を聞き、耶万の社の司アコが呟く。


「そうだね。で、どうする。」


アコの憑き蛇、照がシュルリ。


「使おうかな、耶万の夢。」


ステキな響きだが、致死率100%の猛毒デス。


「ねぇアコ。ドコにドウ使うの。」


蜷局とぐろを巻き直し、ワクワク。


雲井社くもいのやしろから知らせを受けるまでは、調べるダケで何もシナイよ。」






耶万に滅ぼされた国は、アコが社の司になるまで酷い扱いを受けていた。


アコが耶万王やまのきみせがれだと知り、万が一に備えてイロイロ整えた国は一つ、二つでは無い。



耶万を見る目が変わったのは『王より社が強い』『社が認めなければ動けない』『王でも、社に逆らえば死ぬ』『裁きを受けて死ぬ』と広く伝わったから。



耶万に滅ぼされたが、生き残りが居る国は組み込まれた。


妖怪の国守が居る国は結び、社を通して腰麻や明里と繋がりを。他の国は耶万を通して支え、助け合う。






うね、悦、大野、光江、安の生き残り全てが悪い事を考えたり、わざわいもたらすんじゃない。でもね、そんな人が多いんだ。」




他の国は立て直し、子の数も増えた。足りない物は余っている物と換えっこし、冬を越せるよう努めて。


樵や狩り人が足りなければ、田や畑が獣に荒らされる前に来てもらう。海や川に近ければ、釣り人に子を預ける。


そんな付合いがアチコチで行われ、少しづつ豊かになった。



妖怪の国守や祝が居なくても、戦い守れる隠が居なくても助け合えば生きられる。なのに奪う事しか考えられない、そんな国が五つも残ってしまう。




「諦めちゃイケナイ。解っているのに、思ってしまうんだ。」


「アコ、顔を上げて。下を向かないで。」


「ありがとう、照。」


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