5-49 お肉だぁ。
兎が五羽、罠にかかった。傷がなく、毛並みも良い。良い品になる。他の食べ物と、換えられるだろう。
カノシシ、大物だ。こちらも良い毛並み。締まっていて、うまそうだ。
それはそうと、驚いた。賢い犬だと思っていたが、ここまでとは。少し教えただけで、猟に強くなった。加えて、力もある。
「頼りにしているぞ、シゲコ。」
「ワン。」 ハイ。
「おかえり、シゲ。大猟だなぁ。」
「シゲコが、良く働いた。」
「そうか。偉いぞ、シゲコ。」
「ワン。」 エッヘン。
シンに、イチのことを話した。飯田の、長の孫だという。十一で春、十二になるそうだ。子じゃないか。
飯田か。あの長、悪いからなぁ。イチには悪いが、関わりたくない。
「オレ、イチの気持ち。分かるよ、少し。」
そうだよな。イチは真っ直ぐで、良い子だ。年は、ごまかしていたが。もうすぐ十二になるなら、許すか。
それに、飯田の長と狩り人は、うまくいってない。そう聞いた。いくらイチが良い子でも、悩むだろう。狩り人にして、良いものか。一人で出るしか、無かったのかもしれない。
「飯田の長とは、関わりたくない。でも、あの長。兎の肉、好きなんだ。」
そういうことなら、当てにしよう。少しでも多く、蓄えたい。この山は冷える。稲が育つとは、限らない。二年? 三年? かかるだろうな。
「見晴らし、良くなったなぁ。」
一本切るのも大事だ。なのに、二本も。
「おかえり。大猟だな。」
「ああ。シゲコが、良く働いた。」
「そうか! イイコ、イイコ。」
ノリに撫でられ、ブンブンと尾を振っている。そのうち、取れるんじゃないか?
「たんと、おあがり。」
子らが、おいしそうに食べている。干し肉じゃない。はじめて食べる、柔らかい肉。
早稲じゃ狩っても、狩っても、横取りされる。だから、干し肉にした。干し肉なら、長く食べられる。肉だけじゃない、魚も干した。
子は宝だ。大きく、強く、育ってくれ。決して、ひもじい思いをさせない。させたくない。
セツはもう、いない。でも、オレは一人じゃない。助け合えば、冬だって越せる。必ず、良い村にするんだ。
釜戸社の、祝から許されたんだ。攻められれば戦い、守ることを許された村。守ろう。子らのために。
「うぅ、うまい。うまいよ。」
肉を頬張り、シンが言う。お前は食べてただろう、肉。何度か、持って行ったぞ。
「オレさ。肉、好きなんだ。」
そう、みたいだな。
「みんな。しっかり食べて、大きくなれよ。」
「はぁい。」
まぁ、いいか。