14-3 お年頃
アコの顔立ち、体つきも死んだ耶万王に瓜二つ。だから生かされたと知り、泣きそうになる。
「ありがとう。」
母、煇に刻まれた記憶は消えない。いつまでもアコを苦しめ、追い詰める。けれどソレは呪いでは無い。
愛し子に強く、賢く生き抜く術を。己と同じ過ちを犯さぬよう、シッカリと伝えるためにした事。
「さぁアコ。祝の先読、耶万神に御伝えしよう。」
真中の七国が兵を求め、中の東国に仕掛ける? やっと引いたのに何があった。
いつものが倭国と結ぶ、のは分かる。あの国は弱いから。にしてもオカシイ、何だ。闇喰らいの品でも持ち込まれたのか。
ユイの先読は外れない。真中の兵がボロボロの舟に乗って、光江の港に入るだろう。
陸に上がって直ぐ、闇の種を植えられて死ぬ。光の雨を降らせる。
「マノ。この事、社を通して。」
「はい、耶万神。」
耶万神の使わしめ、マノは黒蛇の隠。使い蛇を向かわせ、己は腰麻へ急ぐ。
腰麻社には妖怪の祝、ユキが居る。闇蛇ユラも妖怪。他の蛇には任せられない。
妖怪の国守は少なく、その多くが地の国つ神に仕える。けれど会岐、大石、加津、千砂は結んだ。
腰麻は社を通して繋がっているので、知り得た事を隠さず伝える。万が一に備えるために。
「そうですか。」
驚きはシナイけど、懲りないわね。纏めて根絶やしにすれば良いのに。
「ユキ、抑えて。」
ユラに窘められ、ハッとする。
「口に。」
「顔に出てた。」
・・・・・・ポッ。
「マノさま。お知らせくださり、ありがとうございました。」
ニコッ。
「はい。では、また。」
腰麻社を通って向かうのは、耶万社ではナク大貝社。
耶万は大貝山の統べる地に在るので、和山社へ伺う前に御知らせせねばナラナイ。
「ホウ。」
真中の七国は戦狂い。数多の神が御隠れ遊ばし、現れ出られるのは軍神。ではナク御饌津神。
『食べ物が欲しい』と望まれたのに、『戦に勝ちたい』と願われる。いや聞いてナイよ。とは言えず、そのまま御隠れ遊ばすトカ何とか。
「この地に攻め込むと言うのなら、どんどんバンバンやってしまえ。」
大貝神の使わしめ、土は地蜘蛛の大妖怪。細長い袋状の巣を作るのが上手い。その袋を開いて縫い合わせ、袖ナシの外套を作成。
ソレを翻し、アチコチ指差される。
代替わり為さった大貝神は今、ちょっびり患って御出でデス。
お年頃ってヤツだね。南を指差し、フフン。
「ハッ。」
いろいろ察したマノ。蜷局を巻き直し、一礼してからシュルシュルと退出。
「土、思いを届ける。コレへ。」
「はい。」
和山社まで延びている伝声管。ではナク伝声糸を差し出し、心の中で拍手喝采。