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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
七国統一編
1211/1591

14-2 甘い、かな


大貝山の統べる地にある大国おおくに耶万やま大王おおきみ大臣おおおみは飾りで、国を治めるのは耶万社やまのやしろの人。


大王も大臣もおみも皆、社の司に闇の種を植えられている。だから決して逆らえない。






「アコさま、よろしいでしょうか。」


耶万の祝、ユイが社の司に声を掛けた。


「見えたのかい。」


「はい。」



ユイは清めの祝女はふりめと、波読みの祝人はふりとの間に誕生。


耶万から闇が溢れる前に逃げようとして見つかり、二親ふたおやとも『先見さきみ先読さきよみの力が有れば』と思いながら死んだ。


その願いが届いたのか、残された娘は先読の力を得た。



真中まなか七国ななくにいくさに勝つため、多くのつわものを求めます。大王たちは昔、何が起きたか忘れたのでしょう。中の東国ひがしくにに兵を送り、奪い取ろうと。」


また、ですか。


「そんな大王に悦、うね、大野、光江、やすの生き残りが近づき、倭国しずのくにと結ぶ事になります。」


「倭国か。」


津久間つくまの西にある大国は、これまでもイロイロやらかしてきた。そのたびに妖怪の国守が集められ、力をふるうが全て救えるワケじゃない。


「はい。アコさま、このままでは何れ。」



明里あかりには悪取神あとりのかみ御坐おわす。その隣、加津かづ千砂ちさには妖怪の国守が居る。近海おうみ、大浦は守りながら戦える大国。守りが薄く、おかに上がれる港は光江だけ。


耶万に滅ぼされた国は多い。


落ち着いた今も悪さするのは、あの五つ。悪い事を考えれば死ぬ。闇の種が芽吹き、プゥっと膨れた実が弾けるから。それでもヤツらは光江に集まり、願うのだ。



「揃って悪い事をしなければ生きられない、親から子へ受け継がれる呪いが掛かっているのかな。」


死んでも解けない強く、恐ろしい呪いが。


「そうなら纏めて。いえ、忘れてください。」


耶万社の、祝の力を持つ人すべてが同じ事を思った。けれど言えない。


「わかった。」



耶万に破れ、組み込まれた国の民は早く死ぬ。アコに闇の種を植え付けられ、光に変わるから。


なのに同じのが生まれる。幾度いくたびも幾度も諦めず、力を揮っても同じ事の繰り返し。もう『呪い』としか思えない。


清めの力を揮っても消えない、弱くも薄くもナラナイのだ。他に何がある。



「アコ。」


蛇谷の祝に憑く白蛇のおにてるが寄り添う。


「ありがとう、照。」


憑き蛇を優しく撫で、微笑んだ。



蛇谷は耶万に奇襲され、滅んだ小国の一つ。


アコの母、ひかるには光を飲み込む強い闇の力が有った。防御型だったのに滅んだのは、蛇谷の子を質に取られたから。内から壊されたから。


照は煇に頼まれ、アコが闇を使い熟すまで姿を隠していた。モチロン気付いていたのだが、何となく言い出せなかったダケ。そんなアコを支え、導いている。



「出来るだけ滅ぼしたくないんだ。甘い、かな。」



煇は幾度も耶万王やまのきみに穢され、他の男にも。その結果、命と引き換えにアコを出産。生まれるまで誰の子か判らなかったが、記憶を闇に移してはらの子の魂に刻む。



「アコは煇に、とても良く似ているね。」


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