14-1 来世では
新章スタート!
真中の七国、戦国時代に突入。兵を求め、中の東国に派兵する。糸を引くのは毎度おなじみ悦、采、大野、光江、安の破落戸ども。
耶万のアコが力を揮い、真中の七国に光の雨が降る。けれどアチコチから闇が噴き出し、さぁタイヘン。引き寄せられるように集まるのは悪いヤツだけじゃ無い。
闇喰らいの品ダケでも厄介なのに憑物、怨霊まで出てきたよ。
七国統一編、はじまります。
真中の七国には七つの国が在る。笠国、駒国、剛国、倭国、瀬国、飛国、保国だ。
何れも山に囲まれており、獣が多い。
当たり前のように戦を仕掛け、攻め込むので骸を啄む烏が群がり、人が焼けた匂いが立ち籠める。
うつる病が流れ、食べ物も少なく、『お腹いっぱい食べる』なんて夢のまた夢。
そんな地に生まれ、死と向かい合う人たち。
「はら、へった。」
言の葉にしても食べ物は出ない。それでも、分かっていても口にせずにはイラレナイ。
「もう嫌だ。」
ガリガリに痩せた幼子が呟く。
死んだ親が言っていた。中の東国の真中には霧雲山の統べる地があり、治めるのは王でも大王でもナク祝辺の守。
人の長は人の守とも呼ばれ、死ぬと隠の守になって力を揮い続けると。
霧雲山の統べる地は中の東国の真中に在って、平たい地は少ないのに食べ物が良く育つ。山にも川にも美味しいモノがイッパイあって、飢える事も凍える事も無い。
周りも同じで皆、幸せに暮らしている。
「死ぬのかなぁ。」
七つの国が戦を始めた。若い男が集められ、兵にされる。
「カラカラだ。」
田んぼに引く水が無い。川や泉に毒が投げ込まれ、使えなくなったから。
「ココも。」
隣みたいに、助け合えば良いのに。
中の東国を統べるのは霧雲山、神成山、畏れ山、越道山、斑毛山、大貝山、津久間、具志古。
八つの地には神が御坐し、強い祝の力を持つ人が仕えている。
統べる地には多くの国があるが、人の長は社の司。霧雲山だけ人の守が長を務めるトカ何とか。
「行ってみたい。」
伸ばした手が土を叩き、そのまま動かなくなった。息はしている。けれど、そのうち。
真中の七国ではナク中の東国に生まれていたら、いろいろ違っていただろう。
親に守られスクスク育ち、生きる術を学ぶ。誰かと契って親になり、生まれた子を慈しみ育てる。その子が親になって孫を抱く。
当たり前の暮らしが当たり前では無い。そんな地に生まれたから親無しになり、飢えて乾いて死ぬ。
誰にも葬られず、転がる骸を獣が食らう。
「カァ、カァ。」 ソロソロ、ツイバムカ。
枯れ木に止まる烏が狙うのは、ドロンとした幼子の目。
「カァ。」 マテ。
主を失った狩り犬が、コチラをジッと見ている。
死を待つ幼子に近づけば噛みつかれ、そのまま食われるだろう。
「ぁ・・・・・・。」
目から光が消えた。
霧雲山の統べる地には強くて賢い王が居て、王の上に大王、大王の上に祝辺の守と呼ばれる人の長が居る。
人の守が人の長で、死ぬと隠の守になって守ってくれるんだ。
美味しい食べ物がイッパイあって、病を癒す薬もあって、みんな笑って暮らしている。
母さん、父さん。姉さん兄さん。みんなで霧雲山へ行こうよ。
きっと幸せに暮らせるよ。