5-48 し、師匠!
イチは、狩り人に憧れた。もちろん、米は好きだ。稲も、美しいと思う。思うが、どうしても狩り人になりたかった。
父も母も、兄たちも。誰も狩りをしない。そして、言われた。
「オマエに狩りなんて、出来ない。諦めろ。」
腹が立った。やってみなけりゃ、わからない。
「出来る。諦めない。」
狩り人の住まいを訪ねる。
「オレを、狩り人にして下さい。」
頼みこんだ。
「・・・・・・え?」
呆れられた。
「それでも、それでもです。諦めなかった。どうしても狩り人になるんだ。そう言って。」
願いを叶えたいと、努めるのは良いが・・・・・・。
「子だろう。一人では。」
「いいえ、違います。子に見られますが、十二です。」
人は、見かけによらない。
「信じよう。だが一人で、山に入るのは良くない。何かあったら、どうする。」
ウルウルしだした。
「せめて、もう一人。犬も連れてだな。」
「か、狩りを。狩りを、教えてください。シゲさん、いえ、シゲさま。」
懐かれた?
「いやっ、待て。」
「はい。待ちます。」
真っ直ぐなのは良いが・・・・・・。
「悪いが、急ぐ。教えていられない。狩らんと。」
キラキラするな。見るな。
「わかりました。」
そうか、わかってくれたか。
「お供します。」
はぁ。
「クゥ。」 コマッタ。
コイツ、良いヤツだ。でもシゲさん、困ってる。
「ヨシ、ヨシ。」
シゲコを撫でた。
「ワン。」 エヘッ。
ブンブン尾を振った。
「あの、シゲさま。」
「さまは、よせ。」
「シゲさん。」
「何だ。」
「ついて行きます。」
いや、来るな。
「帰れ。」
そんなに、しょげるな。わかりやすいヤツだ。
「教えてやる。春になったらな。」
パァッと、明るい顔になった。
「きっと! きっとですよ。」
うんうん。わかったよ。
「ああ、きっとだ。だから、帰れ。」