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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1207/1593

13-54 憎しみに呑まれた私には


の犬は闇にまれ、おので考えられなくなっていた。


ボゲェっと空を見つめ、息をするダケ。そんなワンコが清められ、目に光が戻った。




「クゥン。」 カラダガオモイ。


「ヨシヨシ。このまま祝社はふりのやしろで暮らすかい? 祝辺はふりべの誰かに、引き取ってもらおうか。」


・・・・・・。


「ではおにの守。そうだね、みつに頼もうか。」




晄は十七代、祝辺の守。日光に弱く、夜にしか出歩けないが強い守りの力を生まれ持つ。


仕掛けられたアレコレを寝ている間に返すので、ヤンチャな守から恐れられている。



八に言わせれば、とつ守の次に厄介な存在らしい。




「クゥゥ。」 ネムイ。


ひとつ守の腕の中で気を失い、そのままグッスリ。


「おやすみ。」


抱っこしたまま祝社に連れ帰り、人の守に預けられた。






良く分からないケド、今のウチに。


「見つけた! とつ守。」


テイに闇を植え付けられ、鎮森で死ぬことを選んだ獣たち。むくろから抜けた闇が集まり、結晶化した水玉を持ち上げたまま急接近。


「おや。」


スッと屈み、微笑んだ。


「この石は、そうですか。」


石にチョンと触れ、カヨの思いを知る。


「とつ守。この石をテイごと、とむらってください。お願いします。」




テイは白夜間神はやまのかみの使わしめ、雪花きよはるの狐火に焼かれて消えた。


残っているのは、この石一つ。白夜間社はやまのやしろに持ち込めば何も言わず、消して無くしてしまうだろう。


けれど、それを望まない。




「私は、己と同じ思いをする女を無くしたかった。」


カヨがソッと石を置き、告白する。




山守のたみは人を、さらった人を人とは思わない。男も女も、子にも言えないような事をして楽しむ。


山守神やまもりのかみささげる』とか『生贄いけにえを御求めだ』とか、『人柱ひとばしらにする』とか言ってなぶり殺す。



山守の民が居なくなれば、根絶やしに出来れば多くの命が救われる。そう思ったから考えた。


頭が痛くなっても、眠れなくなっても考え続けた。




「それで、呪いを。」


「はい。」




祝の力なんて無いのに多鹿たかから攫われ、近くの森に連れ込まれて穢された。山守のひとやに入れられても、ずっと。


死ねば終わる。そう思ったのに、死んでも続いた。骸が朽ちて匂うまで、幾度いくたびも幾度も繰り返し。



闇堕ちして呪い種になり、隠のときへも行けない。多鹿に戻ればわざわいもたらす。そんな気がして、怖くて近づけなかった。


きっと、これからも。




「謝っても、弔っても許されると思いません。けれど私は、憎しみに呑まれた私には。」


とつ守は黙ったまま、カヨを見つめる。


「山守の民を片付けたら、山越の民に仕掛けます。子や女が笑って暮らせる、そんな山になると信じて。」




山守や山越の民が死に絶えても、同じ事を考える人は現れるだろう。


けれど山守や山越の民が、どんな死に方をしたのか。長く長く語り継がれれば変わるハズ。




「思うように、お遣りなさい。鎮森の民と共に見守ります。」


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