13-53 弔いなら
言い付けを守らず明日は、分ティに乗っ取られたセイに駆け寄った。体を奪われ、ティ小と一つになるために狩山を出る。
ティ小は琴を明日に譲った。今でも、そう思う。
あの洞は祓い清められ、もう近づけない。けれどティ小のうたは、ティ小を慕っていた隠が歌い継ぐ。
それを遠くから見守っていると。
「明日の骸は葬れない。でも、テイの弔いなら。」
カヨが洞の奥から地に潜り、テイの魂を探しに出た。
鎮森は心の強さや力を厳しく試す、人を通さない森。社は無い。
入ってきた人を生かすか殺すか決めるのも、人の守を選ぶのも、祝辺の継ぐ子を選ぶのも鎮森の民。
生まれ育った地に戻れなかった隠、人の世に留まると決めた隠が暮らす。それが鎮森。
テイは祝辺の獄で、狐火に焼かれて死んだ。消えて無くなった。だから残っている、カモしれない。
ほんの少しで良い。テイの思いが木や砂、草や花に宿っていれば弔える。
「祝辺の獄は、違うな。」
入るとアブナイので、外からグルッと見て引っ込んだ。
「祝社も違う。」
キョロキョロ、スッ。
「祝辺は、っと。」
スゥイ、スイスイ。
「うん、無い。」
ススイ、スイ。
本テイから切り取られ、崖下に落とされた闇。それが纏まり、融け合って生まれたのがティ小たち。
本ティとティ闇、分ティは狐火で焼かれて消滅したが、他の闇は違う。
喰谷山の洞でフサに破れ、消滅した切ティ。梅の湖でシナに破れ、消滅した小ティ。流離山の洞で分ティに急襲されたティ小。
「あった。」
アチコチ探し回り、やっと見つけた。
ヴァンの他にも闇を植え付けられ、苦しんだ獣がいた。その骸が鎮森で朽ち果て、引き寄せ合って結晶化。水玉となる。
煙水晶のように妖しく、ズッシリしているが小さい。
「巻き込んでしまって、ごめんなさい。」
コロンとした石を撫で、心から謝罪した。
「弔いを頼むなら、山守より祝辺よね。」
石を持ち上げ、そのまま祝社へ向かう。
「あれ? 石が動いている。」
ふたつ守が目を丸くした。
「待て待て待てぇ。」
みつ守が追いかける。
「コレっ。」
ひとつ守に捕まり、シュン。
「あれは鎮森の石。隠の守が引き寄せているか、何かが運んでいるのでしょう。」
大当たり!
「じゃぁ、あの石を」
「イケマセン。」
隠の守なら誰でも良い、というワケでは無いんだよ。
「はぁい。」
仲良く並んで、ニコリと笑った。それからタッと駆け出し、二手に分かれて犬を捕らえる。
「ひとつ守、八の犬です。清めてください。」
「・・・・・・分かりました。八を、ここへ。」
「ハイッ。」
「お任せください。」
キリッ。