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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1205/1591

13-52 憎しみは消えない


山守のたみは生まれる前から歪んでいるのか、育つウチに歪むのか分からない。けれど闇の種が芽吹めぶき、根を張るのが早過ぎる。




「どうしてテイは。」


九尾ここのおの狐の血を引くセイと、祝の力を持つヒサの娘として生まれた。


目の色も髪の色も薄く、血の管が透けて見える。そんな人でもおにでもないテイは、祝の力を持たずに祝になれた。


幾ら何でもオカシイ。


「山守だから?」


山守の社の司は、親から子へ受け継がれる。継ぐ子は祝の力を持つ子を集め、やしろの離れで守られて育つ。


禰宜ねぎは継ぐ子の中で、誰よりも賢い者がく。


「あぁ、そうだ。」


テイが祝だった時は、今とは違っていた。






昔は他とは違う人を集め、神の意向をガン無視して生贄いけにえ人柱ひとばしらにしてきた。


山守と祝辺はるりべが分断後は『清き娘をささげれば、祝辺をしのぐ力を得られる』と信じて疑わなくなり、多くの命を奪う。



そんな場所だったからカヨは迷わず、祝に呪い種を受け付けられた。山守の民を根絶やしにして、おのと同じ思いをする者を無くす。


そのために。






「テイは。」


山守の祝として働き、ポックリ死んだ。


「時が掛かったなぁ。」


ずっと、ずっと呪い種を植えていたのに、なかなか芽吹かず頭をかかえたモノだ。


テイが死んで、やっと。






呪いが動き出した。


肉体は滅んでいるのに魂ダケが残り、山守の祝を操り続けたのだ。テイが憑くようになると呪いにより、歴代祝は力を喪失。


これまで以上に生贄や人柱を求め出す。



社の司と禰宜、最後の祝となるヨキが密約を交わし、テイが消滅するまで祝選定を中断する事になった。






「そろそろ選んでも良さそうなのに、どうして。」


山守の民を根絶やしにする、とても良い呪いを見つけた。ポンと植え付け、そのまま放っておけば実をつける。


「そうか。」


山守社やまもりのやしろの人に植え付ける気は無い。けれど知らないから、選びたくても選べないんだ。




憎しみは消えない。たった一度ひとたびいだいてしまったら終わり。死んでも残って苦しめられる。


「このまま。」


どんなに悔いても戻らないし、謝りたくても謝れない。無かった事に出来ないから、消えて無くなるまで背負い続ける。


「これからもティのうた。」


歌っても良いのだろうか。




「♪ 闇の中一人うた歌うよ ティ小は何時いつだって 夢を忘れない♪」


鎮森しづめもりの民が、子らが歌っている。ティ小の、最後のうたを歌っている。


「♪ まない雨は無い 明けない夜も無い いつだって光は心の中♪」


楽しそうに、跳ねるように歌っている。



・・・・・・ごめんなさい。






ティ小がすくそこねた闇が望月湖もちづきのみずうみに流れ込み、時間を掛けて融合したのがティ。


毬藻まりも状態からますき、分ティぎょ。分ティ魚からたぬきに乗り換え、分ティィ。


狸が死ぬ前に逃げ出し、毬藻に戻って遣り直し。分ティ魚から出て鹿に憑き、分ティ鹿。分ティ鹿から人に乗り換え、分ティとなる。



最後に憑いたのが山在やまきめかんなぎ明日あび。ティ小を吸収し融合成功後、うつわが持たず崩壊開始。


慌てて狸に憑くも雪花きよはるの狐火に焼かれ消滅。



明日は今も、あのほらで。


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