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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1204/1591

13-51 巻き込まれる前に



清めの力を持っていたツルは、おにになっても山守を守ろうとした。けれど山守のたみに見切りをつけ、鎮森しづめもりの民として暮らしている。


願いは一つ。山守や祝辺はふりべから、強い力を持つ子を守る事。



光の鏡は乱雲山、光の珠とつるぎ鎮野しづめのにある。選ばれた子が身に宿し、取り出される事なく受け継がれるだろう。それで良い。


あまつ神の御力が込められた品が、とても清らな力が人のときもたらされたのだから。






「いつか、この地に舞い降りる。」


そんな気がする。


「その時は鎮森の皆で、力を合わせて支えよう。」




鎮森は人を選ぶ。木も岩も、土も水も風も全て。祝辺の守を選んだり、他から逃げ込んだ人を守ったりする。


そんな森を荒らそう、乱そうと考えるのは山守の民だけ。



だから迷わせ、谷に落とすのだ。






「ツルさま。」


「おや、ヨキ。もう良いのかい。」



カヨが歌うティ小のうたは、鎮森の民に愛されている。ひろ靄山隠もやまおに、雲が聞きに来るコトも。



「はい。ツルさま。山守の民は、もう。」


「そうですね。」




山守は人のおさである、社の司が治める事になった。なのに村長がつわものを集め、許し無く御山を下りた。


川を下って嚴山いずやまに入るも、仕掛ける前に仕掛けられたと聞く。



そのまま逃げ帰れば良かったのに、隠れ里を二つも襲った。いや攻め込んで逃げ帰り、その数を減らして戻る。


山守の民は呪いで死に、生き残ったのは嬰児みどりご幼子おさなご。なのに、その子らを。




「呪い種を植えられた山守の民が、このまま静かに暮らせるとは思えません。けれど、あの呪いは。」


多鹿たかわざわいを齎そうとしたり、多鹿の人を攫おうと考えれば芽吹くモノ。


「生き残った子は残らず、人の長である社の司が育てるでしょう。祝の力が無ければ継ぐ子にはなれません。」


「はい。」


分かっている。けれど生き残りの中には、あの長と同じ考えを持つ人もチラホラ。


「ヨキ、そう難しく考える事は無い。戻ったつわものは死ぬ。」


「エッ。」


「子が暮らす家、戻った兵が暮らす家。その闇を見れば判る。またむくろを焼く煙が高く、高く上がるだろう。」




翌朝、顔を洗おうと外に出た子が腰を抜かす。


生きて戻った兵たちが、家の回りで死んでいたから。腹を差し違えて、重なるように死んでいたから。




「うぅん、よく寝た。」


大岩の上に出て、グインと背伸び。


「おはよう、ティ小。」


ティ小は、もう居ない。けれどカヨは毎朝、欠かさず声を掛ける。


「ん、この感じは。」



カヨが地に潜り、山守の村へ向かう。とても濃く、深い闇が噴き出すのを感じたから。骸からなら良いが、地から噴き出していたら大事おおごとだ。



「うん、違う。」


地の中をグルグル回って調べ、闇溜やみだまりが無い事を確かめる。それから顔を出した。


「おや。」


骸から濃い闇が噴き出し、渦を巻いているのを見た継ぐ子がまばたきし、山守社やまもりのやしろへ駆け出した。


「巻き込まれる前に戻ろう。」


スッと潜り、サッサと進む。


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