表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1202/1596

13-49 呪いだ


カヨがティのうたを歌い始めてから、鎮森しづめもりに吹く風が優しくなった。と言っても、それは森の中だけ。


山守の地は息をするダケで疲れるような、濃く深い闇に包まれている。






「何が、何が起きた。」


やっとの思いで戻ったら、たみの多くが死んでいた。生き残りは幼子おさなご嬰児みどりご


「あ、狩頭かりがしらだ。」


「肉。肉たべたい。」


幼子がフラフラしながら近づき、ボロボロになったころもつかむ。


「日が当たるトコロに植えても、芋も豆も育たない。食べ物は貰えるケド、キュルキュル鳴るんだ。」




祝辺はふりべから月に一度ひとたび、届けられる食べ物を受け取るのは山守社やまもりのおやしろ。社の司と禰宜ねぎが皆に渡るよう調べ、離れでくばるので誤魔化ごまかせない。


これまでは思い通りに出来たのに、もう好きに出来ないと知り、男たちはいきどおる。




かしら。アイツら纏めて生贄いけにえにして、社のヤツらを消しましょう。」


「女が居ないのに、どうするんだ。」


「えっ。」


「山守を潰すのか、と聞いている。」


「い、いいえ。」


「なら黙れ。少し休んだら森へ行き、狩りをする。良いな。」


「はい。」




山守の地は崖の下、それも北にある。


日当たりも風通しも悪く、土まで痩せているので祝辺からアレコレ貰わなければ、山守の民は生きらない。



同じ山に在るのに、崖の上にある祝辺は豊かだ。


ずっと昔から幾人いくびとか、あの崖を登ろうとした。けれど川から地涯滝ちはてだきに流され、そのまま落ちてしまう。




「ワシらは死ぬまで、山守から。」


山守の外に出る事は出来るが、山守の外では生きられない。そんな呪いが掛けられてる。幼い時、母から聞かされた。


「認めたかナイが、そうなんだろう。」


もう疲れた。


村長むらおさに言われるままつわものを引き連れ、隠れ里を襲った。女をさらい、連れ帰り、ボコボコ産ませるために。


「山越に頼るか。」


いや、きっと断られる。生きて戻れない。


「フッ。」


この村で出来る事をして、この村で死ぬのか。ソレも悪くナイ。






「多鹿に手を出せば殺される。」


「多鹿に手を出せば殺されるぅ。」



・・・・・・エッ。



「狩頭! 殺し合いが、殺し合いが始まりました。」


生き残りの一人が家に飛び込み、しゃがみ込む。


「何が起きた。何でソウなった。」


「分かりません。アッ。」


「何だ、言え。」


「殺し合う前に『多鹿に仕掛ければ』と。で『そうしよう』と言ったのが向かい合って、それで。」



あぁ、呪いだ。死ぬんだな。



「頭、逃げましょう。山越なら」


「いや、追い返される。」


山越の長は母や姉を生贄に。だから山守を、山守の民を嫌っているんだ。


「終わりだ。もう終わりだぁぁ。」


「泣くな、立て。この地には山守社がある。祝辺に捨てられる事も、潰される事も無い。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ