13-48 見守りましょう
山守の民が大泉、鎮野に仕掛ける事は無い。と思われているが違う。強い祝の力を求め、幾年か先に攻め込む。
「光の子。」
数多の力と、人とは違う力を受け継ぐ娘。
「先見さま。」
「御婆さま、この事は。」
「はい。この胸に。」
鎮野には『先見さま』と呼ばれる娘が居る。母から娘に受け継がれる、強い先見の力を持つ娘が。
その代償か老化が早く、二十歳前後で死亡する事が多い。
名は齋、嚴、樹の順に付けられ、『御婆さま』と呼ばれる養育係に守られ育つ。
成人までに娘の父を選び、先見の力を受け継ぐ子を産み育てなければナラナイが、幼馴染と契る事が多い。
「榦、このまま聞いてください。」
御婆さまは引退した社の司、禰宜、祝の中から選ばれる。当代は元、祝で心の声が聞こえる榦。
「はい、齋さま。」
「山守の民が呪い種、多鹿のカヨに呪われました。嬰児と幼子は生き残りましたが、強く呪われています。」
「それは・・・・・・その。」
「山守の社の司と禰宜が代わり合って、十二になるまで育てるでしょう。」
「はい。」
「許し無く山を下りた民は、戻って直ぐに呪われ殺し合う。ソレを見た幼子が、育った嬰児に言い聞かせるのです。『多鹿に手を出せば殺される』と。」
ゾゾゾッ。
「祝、聞きましたね。」
「は、ハイッ。」
鎮野社の祝は御神木に選ばれた『声の子』で、心の声が聞こえる元、継ぐ子。聞き耳を立てなくてもバッチリ聞こえマス。
聞いたのは『山守の民が呪い種』の辺りからデスが、冷や汗が止まりません。
先見さまは別格。社の司や禰宜、祝でも緊張してしまう。そんな御人に『聞きましたね』と問われ、恍けたり嘘を吐いたり出来ませんヨ。
全て見ちゃってマスから。
「とつ守に気を付けるように。」
「はい。」
とつ守は草木の声が聞こえる隠の守で、鎮森の民に寄り添う祝人。名は清だったカナ。
霧山社の継ぐ子だったのに、霧山を守るために祝社に移った。
『木の子』より多く聞こえる、とても優しい力。なのに恐ろしい。鷹や鷲でも怖いのに木菟、それも大きくて強い鷲鵂に守られている。ブルル。
言われなくても気を付けます。
「先見さま。鎮森の民が山守社の奥、大岩の辺りに集まっていると禰宜から聞きました。」
「はい。」
「闇が隠を集め、何かを。宜しいのでしょうか。」
「はい。皆で集まり、楽しく過ごしているのです。悪い事ですか?」
「いいえ。」
「山守の民と鎮森の民は違います。見守りましょう。」
「はい。」
祝が一礼して、スッと下がった。
齋は鎮野から出た事が無い。けれど叶うなら、カヨの琴と歌を聞いてみたい。そう思っている。
ティ小は消えてしまった。けれど、その作品は愛され続けるだろう。
これからも、ずっと。