13-47 力が欲しい
何か違う。熱吹も迫も隠れ里にしては強いが、こんなに戦えたか? アチコチに罠を仕掛け、いや張り巡らせる力など無かった。
「ギャッ。」
また死んだ。
嚴山も変わっていた。進めば矢の雨、退けば串刺し。そうだ、あの山に入って呪われたんだ。そうに違い無い。
一度、戻って山守社へ。いや、あの社が動くとは思えない。
社の司は人の長。『言いつけを破って山を出たから』とか、『山守神は生贄も人柱も要らぬと仰せだ』とか言って見捨てるだろう。
「引く! 引くぞ、付いて来い。」
このまま戻れない。滑川を上がった先に聳える固山、隣の常見も難しい。となると九尋、は無い。
「多鹿。」
行きは良いが帰りはな。烈川を上がるには、もっと多くの水手が要る。
「舟を出せ。」
ピョンと飛び乗る男は少なく、腕を押さえたり足を引き摺る男が多い。滑川の手前で力尽き、手を伸ばす男も居た。
「漕ぎ出せぇ。」
狩頭の一声で、一斉に櫂を持つ。
「ヲォォ。」
流れに逆らい、セッセと漕ぐ。死にたくないから、早く離れたいから漕ぎ続ける。
幾人、減った。生きて戻れるのは、また戦えるのはドレだけ残ったのだろう。きっと少ない、多くない。
人が減っても食べ物は、これからも祝辺から貰える。けれど、きっと祝辺の守が動く。
見張られるのは嫌だ。好きに嬲ってスッキリしたい。
苦しむ姿が見たいんだよ。これからも変わらず、ずっとずっと。
どうすれば守れる。どうすれば、これからも続けられるんだ。
考えろ! このまま戻ってユックリ休んで、それから多鹿を襲う。他に手は無い。
「力が欲しい。」
昔、聞いた。鎮野だか大泉だか、光の珠と剣を持って生まれた継ぐ子が居ると。
ソレを攫って神に捧げれば、きっと山守の民は豊かに暮らせる。祝辺に頭を下げたり、社にアレコレ言われる事が無くなるんだ。
「もっと。もっとモットもっと。」
山守の民は昔からアレだが、日に日にオカシクなる。力を求め、命を奪い、攫ってでも捧げようとするのは壊れたからか。
「呪い。」
では無さそうだ。呪い種を植えられ、呪い祝になったテイは居ない。消えて無くなった。
「考えられるのは。」
他の呪い。呪い種カヨ、呪い祝テイとも違う呪い。そんなモノがあれば、ひとつ守が直ぐに清めるだろう。
サワサワサワ。
「おや、ソレはソレは。」
サワサワ、サワワ。
「そうですね。」
許し無く山を下り、戦を仕掛けた山守の民が戻る。出た時より減らして。
山守の民に攫われ、山守に入る前に山越に逃げ込んだ嚴山の人が戻った。
ウリは死んでしまったがマツは娘、リツを連れて帰る。山越に後添えと末子を残して。
ウイがウリの兄で村長。マツとリツの後見となり、先見の力を持つリツを守っている。そのリツが分社の守となり、力を揮ったか。