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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1199/1588

13-46 守るため、迷わず


山守の民が死んだ。生き残ったのは山守社やまもりのやしろの人と、狩りや釣りに出ていた人。


村には数多あまたむくろが転がり、そのかたわら嬰児みどりごを抱いた幼子おさなごが立ち尽くしている。






「な、にが。」


山守の禰宜ねぎが呟く。


「呪いでしょう。」


社の司が言い切った。




山守社の人が生き残ったのは、祝の力を持っているから。では無い。山守神やまもりのかみの使わしめ、シズエの狐火に守られたからだ。


幼子と嬰児が生き残ったのは、カヨに選ばれたから。では無い。いつか『多鹿たかから』と思った時、呪い種が芽吹めぶくダケ。




「燃やしてから埋めましょう。さぁ皆、掘りますよ。」


「はい。」


社の司に言われ、継ぐ子たちが駆け出した。






くわやらすきやらを持ち出し、セッセと穴を掘る。


骸を並べたらまきで囲い、薪とわらかぶせて泥を薄く塗り、火をけて離れて待つ。火が回ったら次。



山守の民は減っていたが、それなりに居た。火が暮れる前に焼かなければ、獣が集まり食らうだろう。だから早く、少しでも早くとむらわなければイケナイのだ。


生き残り全てが山守社、社の離れに入りきらない。ひとやを入れても足りないから。






「おや、減りましたね。」


人が焼ける匂いが風に乗り、祝社はふりのやしろに届く。


「村の真中まなかから煙が、あんなにも多く上がって。」


山守は崖の下、祝辺は上にある。だから良く見えた。



山守の地から上がる煙を見ていたおにの守に、人の守が近づき微笑む。



「大崖を下って舟に乗り、滑川なめがわを下ったのが驚くでしょうね。」



しばらく黙っていたが、ひとつ守が口を開く。


その目は恐ろしく冷たかった。



「向かいますか。」


「いいえ。」


とつ守に問われ、目を閉じる。






ひとつ守は強い清めの力を生まれ持つ。崖の上からでも闇が見えるし、纏めて清める事だって出来る。けれど動かない。


山守の村から闇が溢れる事も、闇が広がる事も無いと判ったから。



山守神が御力をふるわれたのだろう。闇がうずを巻いてもオカシクないのに、とても清らで澄んでいる。






「とつ守。大崖を下った山守の民、いえ。」


せこの里を回り、嚴山いずやまに入ろうとして逃げ出します。迫に助けを求めるも追い返され、そのまま戻れず熱吹ねぶきへ。アッサリ捕らえられ、獄に放り込まれました。」


「そう、ですか。」


「はい。ひとつ守、向かわれますか。」


「いいえ。」






熱吹は沼垂ぬたりの隣に在る。平良ひらに乗れば行けるが、あの地には近づけない。熱吹の獄で暴れれば沼垂に近づき、そのまま落ちると聞く。


平良の烏はおにではナイのだから。



隠烏に、という手も有るがそう。


沼垂神ぬたりのかみ狭間はざまの守神で在らせられる。御怒りに触れれば大事おおごとだ。






「山守の民は殺し過ぎた。生きて出られても、その数を減らすでしょう。迫も熱吹も嚴山から知らせを受け、備えていましたからね。仕掛け、いや攻め込まれる前に片付けます。守るため、迷わず。」


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