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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1198/1590

13-45 叫びたいのに叫べない


山守と山越でも『多鹿たかに手を出せば殺される』と叫ばせてから相打ちする呪いを掛ければ良い。そうすれば山守にさらわれ、死ぬ人が減る。



「さぁて、始めますか。」


ほらの奥から地に潜り、山守の村を目指す。






イライラ、イライラ。


「まだか、まだ戻らんのか。」


「はい。」


山守のおさに問われ、おみが答える。




臣は気付いている。隠れ里へ送った者も、調べに送った者も皆、山越の民に殺されたと。


どんなに待っても戻らないし、何か起きたのか分からない。




「長、社の司に」


「黙れ! もう言うな。」


「はい。」






山守の長は恐れていた。


もし山守社やまもりのやしろの誰かに、生贄いけにえ人柱ひとばしらにする人を攫えと言った事が知られればドウなるか。


考えなくても分かる。直ぐに捕らえられ、ひとやに放り込まれるだろう。



骨と皮になっても死ぬまで出られない。






「長、戻りました。一人、一人だけ戻りました。」


「連れてこい!」




山守から山越を抜け、山を下りる。危ないが、他より進みやすい。けれど山越に分社わけやしろが建って変わった。


山守の民なら誰でも、迷う事なく谷に放り込む。ソレを知った民が山越ではなく、大崖を下ろうと言い出したのだ。




「他のは皆、滑川なめがわを舟で下りました。ワシが戻ったのは、こうして伝えるため。」


クタクタのボロボロだが、目は輝いている。


「そうか。良く戻った、休め。」


「ハイッ。」




山越は、もう通れない。


隠れ里から多く攫って、子がポンポコ生まれたら仕掛けよう。それまで待つ。腹が立つが、認めたくないが引いてやる。




「人を集めろ。大崖を下り多鹿っ、カッ、ガァッ。」


呪い種を放り込まれ、口を塞がれゴックン。


「おさぁっ。」


声を掛けた臣も、同じように苦しみだした。




山守の長と臣に、呪い種が植えられた。アッと言う間に芽吹き、根を張りポポンと葉を開き、ニョキニョキと蔦を伸ばす。




「多鹿に手を出せば殺される。」


耳から血を流し、長が言う。


「えっ、えぇぇ。」



長の目玉がポロンと落ち、ポンと花が咲いた。


直ぐに散り、プゥっと実が膨れる。それがパンと弾け、目に見ない『何か』が広がった。



「多鹿に手を出せば殺される。」


「多鹿に手を出せば殺される。」


長の家に居た者、全てが向き合い、殺し合う。




フラフラと外に出た臣がバタンと倒れ、ピクピクし出した。


何も知らず集まった人が吸い込んだのは、『多鹿に手を出せば殺される』と叫ばせてから相打ちする呪い。




「多鹿に手を出せば殺される。」


「多鹿に手を出せば殺される。」




『逃げろ』と、『近づくな』と叫びたいのに叫べない。


口から出るのは違う言の葉。山守社へ逃げ込もうとしても、手足がミシミシときしむダケ。


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