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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1197/1588

13-44 見間違い


偉山おおやまから戻ったカヨが、大岩のほらで『ただいまライブ』を開催。スッキリしてからコロンと横たわり、グッスリ眠ってパチクリ。




「エッ、と。おはようございます。」


洞の外に、平良ひら隠烏おにがらすが待ち構えていた。


「おはようございます。」



平良の烏は祝辺はふりべもりの翼。隠烏は祝社はふりのやしろに、代わり合って詰めるモノ。なのだがナゼか、祝辺ではナク山守に。



「きのう、初めて聞きました。良い歌ですね。」


出待ちのファン?


「ありがとうございます。」


ニコリ。




平良の後ろに、神が御姿を変えて現れ為さったのだろう。赤い目をした白いわし御坐おわす。


とても清らで、強い力を御持ちだ。




「では、また。」


ん? 平良よ、気付かぬのか。


「・・・・・・行っちゃった。」


見間違みまちがい、じゃナイよね。


「いらした、よね?」


目をこすっても、パチパチまばたきしても見えない。というコトは。


「うん、き水を飲もう。」






大岩の北に沢がある。


鎮森しづめもりを抜けるのは山守から山越へ逃げ込むか、御山を下る人だけ。狩り人やきこりは知っているが、足を取られるので近づく事は無い。



「♪ 空を見上げて手を伸ばせば ほんの少し心が晴れるよ 俯いたまま歩くよりも ずっと先が見える そう思うから♪」




ティ小のうたを歌いながら、楽し気に歩を進める。そんなカヨを見守るおにや草木、獣たち。


カヨが呪い種だと知っている。知っていて、守ると決めたのだ。



人が立ったまま進める大きな洞、その奥に隠れ住んでいたティ


ガランとした洞の中で琴を掻き鳴らし、歌う闇が求めたのは光。ぬくもり、あたたかさ。




「わぁ、キラキラだ。」


沢が日を浴び、輝いている。




カヨは山守の民が嫌い。山守から山越に移り住み、コソコソ暮らす民も嫌い。他からさらわれ、山守から逃げた人は好き。



おのは生きて戻れなかったから、他の人は一人でも多く帰したい。そう願い、山守の民を減らしてきた。


呪い祝にしたテイには、悪い事をしたと思っている。けれど、あの時は他に手が無かったのだ。




「救うよ。」


テイを通して得た闇は、カヨの力になった。血も肉も無いが、己で動く事が出来る。






テイは消えて無くなったのに、カヨは人のときに残っている。認められたり許されたり、受け入れられたワケでは無い。


それでも消えずに動き回っているのは全て、見逃されたから。



山守の祝に憑いていた闇、ティ。石室いしむろに隠されていた闇、ティあん喰谷山くたにやまの洞にいた闇、ティ。


梅の湖にいた闇、ティ。流離山なばやまの洞にいた闇、ティ小。望月湖もちづきのみずうみにいた闇、ティ。


全て山守の祝だったテイに、呪い種を植えたから生まれた。






「少しでも多く。」


だから、もう迷わない。闇に吞まれたり潰されないよ。



ティ小のうた、ずっと歌い続ける。消えて無くなる、その時まで。


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