13-43 何を見た
カヨに呪い種を植え付けられたテイは祓い清められ、すっかり消えて無くなった。呪い祝は、もう居ない。
なのに山守の民は変わらず、生贄や人柱を求め続ける。
中には山守から山越に逃げ出し、ヒッソリと暮らす者も居るが信じきれない。
その体に流れる山守の血が騒ぐ、かも知れないから。
「うふふ。」
偉山の男、纏めて片付けちゃった。
「同じ事を山守で。」
そうすれば、きっと多くの女が救われる。
大岩の洞に戻ったカヨが、ポワポワ跳ねながらクルンと回る。それから琴を手に取り、ポロロンと奏でた。
「♪ 出来ない 決めつけられて苦しんだ それでも諦めない♪」
ジャン、ジャン。
「♪ これまで積み上げてきた事が いつかは実を結ぶから♪」
大岩の洞にカヨが戻った。
知らせを聞いた鎮森の民は、ウキウキしながら集う。その中には、とつ守の姿も。
「♪ 信じよう その手に掴むまで 後ろじゃなく前を向き走れ 叶えると決めた その時に 目の前に道が開けるもの♪」
カヨは心の底から願っている。山守から山守の民と、山越の民を根絶やしにする事を。
祝社で暮らす守の中にも、カヨと同じ願いを抱く隠がチラホラ。
「フッ。」
先読の力を持つ、ここのつ守が笑った。
「あれ? とつ守と同じ顔だ。」
みつ守がポツリ。
「悪い顔だ。」
ふたつ守、パチクリ。
「二隠とも、覗き見はイケマセンよ。」
「はい、ひとつ守。」
揃って微笑み、一礼してから下がった。
ここのつ守は隠になっても、とつ守の親代わりを務める。
とつ守は近くに緑があれば、どんなに強い呪いも跳ね返す。それに霧山神の使わしめ、ホッホに守られているのだ。他の隠より強い。
それでも力を揮うのは、とつ守が危ういから。という事だろう。
目を離せば、考えられないようなアレコレを整える。迷い無く遣って退ける、そう思うから。
「何を見たのか、聞かせてください。」
ひとつ守にズズイと迫られ、ここのつ守が見開く。
「悪い事ではアリマセン。」
祝辺には。
「ホウホウ、言えないようなコトが起こると。」
「いいえ、違います。」
いや、違わないか。
「で、何が起こるのですか。」
ここのつ守の力は強いが、親から子へ引き継がれるモノより弱い。タエのように選んで択んで、より良い末を探ると酷く疲れてしまう。
だからサッと読んで考える。
カヨが行う、と思われる事。
祝社、いや山守を良くするキッカケになるだろう。けれど多くの血が流れ、人がグンと減るのだ。手放しで喜ぶ事は出来ない。
「それは、その。」
言えない。山守の民が、多くの民が死ぬなんて。
「山守の民が山を下り、他から。となると隠れ里。」
ゴクリ。
「そうですか、遠くの。となると熱吹、いや多鹿。」
ビクッ!