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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1195/1592

13-42 『ただいま』と言って『おかえり』と返される


アラは偉山おおやまには珍しい愛妻家だが、他の女には薄情。


といっても笑いかけたり優しくシナイだけで、心の中では女性をうやまっている。






「そんな事、女に」


「黙れ、ヒヤ。男は女より力が強いんだ。口では無く、手と足を動かせ。」


アラに命じられ、不満そう。


「いや、そう言わっ。何をする! んですか。」


後頭部をパコンと叩かれクワッ。振り返ると、そこにクサが居た。どう見ても怒っている。


おみだろう。大臣おおおみと同じに出来なくても、見習みならう事は出来る。違うか。」


「違いません。」


キリッ。


「なら動け、働け。」


「ヒャイ。」






偉山の男が二人も生き残った。


もう一度ひとたび、と思ったがめる。臣はアレだが大臣は、死んだ男たちと違う。女を気遣い、手を差し伸べる事が出来るようだ。



あの男なら偉山を、女も暮らし易いように変える。そんな気がした。




「カヨさま。ありがとうございました。」


ひろ隠頭おにがしらほうが微笑む。


「えっ、と。」


戸惑とまどうカヨの手を取り、ブンブン上下に振る投。


「偉山は変わります。きっと良い山に、暮らしやすい山になる。そんな気がするんです。」


「そうですね。」



そうだ、山守の民に同じ事をしよう。そうすれば他からドウコウしよう、なんて考えが消えるハズ。うん、そうしよう。



「女が強い里や村は暮らし易く、あの大臣は女を苦しめない。と思います。」


「はい。」


投の考えもカヨと同じ。


「では、戻ります。また、お会いしましょう。」


「はい。お気をつけて。」






山守、山越にも同じ呪いを。


『多鹿に手を出せば殺される』ではナク、『ほかに手を出せば殺される』と叫ばせてから相打ち。そんな呪いを掛ければ、きっと多くの人が救われる。死なずに済む。



山守神やまもりのかみ生贄いけにえ人柱ひとはしらも要らぬとおおせだ。なのに山守の民は『生贄を御求めだ』とか、『人柱をささげよ』と言って人を集める。他からさらう。


山守を治めるのはおさではナク、山守の社の司。あの長が何を言おうが、村は社に逆らえない。



山守社やまもりのやしろの人が殺される事は無いが、継ぐ子が狙われているのは確か。継ぐ子に何かあれば、きっと狐が動く。


そうなればいづれ、山守から祝の力が消えるだろう。




「ソレも良いな。」


いやいや待て待て。山守の民を根絶やしにしてから、山越の民を根絶やしにする。祝の力はドウでも良い。


「手始めにっ。」


山守の民だ!






地の中を通って大岩に戻ると、鎮森しづめもりたみほらのぞき込んでいる事に気付いた。



「ただいま。」


思わず声を掛ける。


「おかえり。」


ニコッ。




『ただいま』と言って『おかえり』と返される。それダケの事なのに、胸がポカポカする。体を失っても、闇の種になっても変わらない。


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