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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1194/1588

13-41 焼こう


子を除き、偉山おおやまで生き残った男は二人。大臣おおおみのアラとおみのヒヤ。



山長やまおさが目をギョロギョロさせた時、何となくアブナイと思ったアラは駆け出し、家に逃げ帰った。


ヒヤは何となく、アラを追ったダケ。






「これからドウなるの。」


アラの愛妻、ビラが怯える。




水は大甕おおがめにイッパイ、食べ物とまきは蓄えられるダケ蓄えていた。けれど水は日に一度ひとたびみに出なければナラナイ。だから女たちが急いで汲みに出る。


アラは何となくおのが出れば変わる、他の男と同じように殺し合う。そう思ったので出なかった。いや、出られなかったのだ。




多鹿たかの誰か。おにか神か、目に見えない何かが力をふるい、偉山から男を消そうとしている。と思う。」


「そんな。」


「良いかビラ、良く聞け。ワシは死なん。後ろ指を差されても、どんな事を言われてもヌシを守る。」


キリッ。






一方、ヒヤは。


「こ、これから。ゴクリ。どど、どうなるんだ。」


家の中で小さくなっていた。


「その男は。」


ヒヤの妻、クサが呟く。


「な、何だい。」


「何でもナイよ。水を汲んでくるから、家ん中に居な。」


「ヒャイ。」






ビラは己が愛されていると自覚しており、アラを心から信じている。


クサは運とヨイショで出世したヒヤを評価しているが、己がシッカリしなければイケナイと思っている。



ビラは畑人はたびとでクサは田人たのひとだが、揃ってシッカリ者。アラとヒヤの役職は違うが、いづれも山長に仕える男。


なのにコウも違うと少し、気の毒に思うが仕方ない。



外に出られない男に代わって、水を汲みに出るのは女たち。そのたびに見た事、聞いた事を話して聞かせる。


男たちが殺し合い、静かになっても外に出さなかった。悪い『何か』が残っている。何となく、そんな気がして。






「これはひどい。」


外が静かになるまで、家の中でジッとしていたアラが呟く。


「えぇ。」


ビラが目を伏せた。




家の多くが焼け落ち、残っていてもボロボロ。むくろは鳥につつかれたり、四つ足に食われている。


あちらコチラの土が赤いのは、血を吸ったからだろう。



外が静かになってから三度みたび、雷は鳴らなかったが大雨が降った。なのに、まだ血を吸っているようだ。


よく見ると腐った骸に、小さな虫がたかっている。




「焼こう。」


「はい。」




大穴を掘るのは男でも、とても疲れてしまう。だから広く浅く掘り、うつわを焼くように焼く事にした。


まず浅い穴にわらを敷き、骸を並べて薪で囲む。さらに薪を上に、その上に藁をかぶせて泥を薄く塗る。で三か所から火をけ、燃え切るまで待つ。


その繰り返し。




「おや大臣、生き残ったんですね。」


「ヒヤ、手伝え。」


「エッ。」


「『エッ』じゃない。薪を集めろ、体を動かせ。」


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