表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1193/1592

13-40 多鹿に手を出せば


多鹿たかの織り人、カヨは好きで呪い種になったワケでは無い。


山守のたみに、男に言えないような事をされて。死んでも腐るまで穢され続け、憎しみをいだいてしまった。



全ての男が悪い、とは思わない。優しく、賢い男も居ると知っている。


けれど山守の民、山越に移り住んだ山守の民。そして偉山おおやまの男は、どうしても許せない! と思ってしまう。






「グッ、グルジイ。」


体内で芽吹いた種が芽吹き、根を張り蔦を伸ばし葉を広げ、その口中に花を咲かせた。


「フガッ。」


ほんの少し開いたくちびるから闇を取り込み、プゥっと実が膨らむ。それがパンとはじけた。


「多鹿に手を出せば殺されるぅ。」


山長やまおさが大声で叫び、短剣をさやから抜く。


「父さん?」


二人いる大臣おおおみの一人、山長のせがれが声を掛けた。その三秒後、頭をかかえて苦しみだす。


「アァッ! ・・・・・・どう、して。ヴグッ。」


胸を押さえながら『何か』を吐き出すと、ドロンとした目になった。それからり、ニヤリ。


「多鹿に手を出せば殺される。」


と言いながらおのを振り上げ、山長に襲い掛かった。






カヨは偉山の腐敗ぶりに呆れ、長と倅に『多鹿に手を出せば殺される』と叫ばせてから相打ちさせる呪いを掛けた。


その呪いにより父と倅が傷つけ合い、殺し合う。



二人が口を開くたび、呪いがフワッと広がった。呪い種を吸い込んだ男たちも、また同じように苦しみ、目の色を変える。


逃げる事など出来ない。






「あ、頭が。」


その場に居た男たちが苦しみだす。しばらくするとブツブツ呟きながらうつわまき、刃物などを手に取りニヤリ。


「多鹿に手を出せば殺される。」


建物の中で殺し合いが始まった。




「多鹿に手を出せば殺される。」


「多鹿に手を出せば殺される。」


「多鹿に手を出せば殺される。」



偉山の男たちが武器を手に、目の色がオカシイ者同士で殺し合う。


生き残りは他の男と殺し合う。皆、初めは胸を押さえて苦しむ。それから見えない『何か』を吐き出し、目の色が変わるのだ。



「多鹿に手を出せば殺される。」


偉山のアチコチで、男たちが殺し合う。


「多鹿に手を出せば殺される。」


生き残っても、他の生き残りと殺し合う。






女は子の手を引いたり、抱き上げて逃げた。近づいてはイケナイ。そう思い、転ばないようにして駆けた。


里や村の外れに建てられた、産屋うぶやや子の家が残っていればソコに逃げ込む。壊されたり燃やされていれば、近くの里や村の外れを目指す。



偉山の女が、女だけで暮らせるのは産屋か子の家。他には無い。


逃げ込んだ里や村でも、男たちは殺し合っている。巻き込まれないように遠回りして、目指す家へ走る。走る。走る。




「怖いよぉ。」


幼子おさなごが母に強くすがり付き、ガタガタ震える。


「ホギャ、ホギャ。」


母に抱かれた嬰児みどりごが、弱弱しく泣く。



逃げ込んだのは母子と娘。婆は皆、家の外に立っている。石器せっきや割る前の雑木ぞうき、弓や剣を手に、命をつなごうと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ