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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1192/1589

13-39 ナゼ、こんなに


偉山おおやま狩頭かりがしら、セイは良い働きをする。このたびも。


そう思っていたのに、まだ戻らない。




「まだか! 多鹿たかにはうなるホド良い女が居る。そう言ったな、ヒヤ。」


山長やまおさおみを責める。


「はい。」


確かに皆、整った容姿をしてマス。


「ならナゼ、こんなに待たせる。サッサと連れてこい。」


そんなコト言われても、困っちゃうよネ。



山長と臣の会話を聞いていた大臣おおおみ、アラが口元を少し緩める。



アラは偉山には珍しく愛妻家だが、他の女には薄情。なのだが暮らし易くするため、偉山を変えたいと思っている。だから大臣になった。


次は長、その次は山長だ。



「戻らぬ男を待つより、残っている女を太らせましょう。あんなに痩せていては、ねぇ。」


他の女に惹き付けられる事は無いが、大きく育つ子は少ない。


育つ子が増えれば、それだけ山の外に出る事が少なくなる。ソレを山長に気付かせればコッチのモノ。


「何が言いたい。」


嬰児みどりご幼子おさなごは直ぐに死ぬ。だから多く産ませなければ、偉山の民は増えません。」


ド正論。


「女を太らせる? ハッ。」


男はやまいかかやすく、女と違って育ちにくい。だから女は荒く扱っても、男より痩せていても死なん。


その女を太らせろと、多く食わせろと言うのか!


「女が増えれば、それだけ選べます。他から攫わず、好きなだけ。」


ムムッ。


集谷あだに小柄こづか燠山おきやま深山みやまも強い。狩山かやまは遠く、守りの薄い高盛崖たかもりがけの上を狙った。」


そう、だな。


「崖の上には、あの山守の民が暮らしています。多鹿に良い女が揃っている事も、きっと。」


「ハッキリ言え。何だ。」


「狩頭セイ。他の男も皆、高盛崖の上で死んだのでしょう。幾ら待っても戻りません。」



大臣が控え目に微笑み、膝をついた。山長は考える。アラが言う通りにすれば、と。



「若い男が減って居ります。山の外から攫ってくるのではナク、山の中で育てる。のも良いかと。」


ヒヤが膝をつき、こうべを垂れた。


「・・・・・・ウム。」


山長だって外から連れてくるのは『もう難しい』と、心の隅っこで思っている。


今一度いまひとたび、人を集めっ。」


クラッ。クラクラクラ、パタン。


「や、山長?」


目を白黒させながら倒れた山長を、臣たちが囲む。






ユルサナイ。


「ヒッ。」


ユルサナイ、ユルセナイ、ケス!


「ナッにを、した。」


慌てた臣たちがアレコレ言いながら、おの手当てあてを始めた。それをボンヤリ眺めている。起き上がるドコロか指さえ動かせず、目をギョロギョロさせてにらみ回す。


「や、めろ。」


冷たい目をしたカヨが黙って、口中に呪い種をじ込んだ。


恐ろしく強い力で口を塞がれ、あごを上げさせられた山長はソレを飲み込み、のどを強く引っ掻いた。



「アッアッアッ。」


短く息を吸い込み、ギリギリまで見開く。


「ァガッ。」


呪い種が肺で芽吹き、根を張りだした。


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