5-46 勧誘
「シゲ、どうする。」
「ん。」
「いや、その、何だ。」
「何だよ。」
「来るか、セツと。」
「子がな。まだ小さい。」
ジンの子だ。しかし、セツは・・・・・・。
「生まれた子に、罪はない。そう言ってな。」
育てているんだ。憎んでも、憎みきれない男の、子を。
「二人、だったな。」
「ああ。男と女。」
「シゲ。オレはな、いいぞ。」
そうは言っても、ここは。
「外に出なけりゃ、いい。」
「子には、厳しいだろう。」
走り回るのが、好きな子なんだ。それを、閉じ込めるのはなぁ。
「ゲン。この里のこと、誰にも言わない。」
「うん。」
「隠す。」
「うん。」
「だから、な。」
「うん。」
オレが、外。ゲンは、内。
「早稲のヤツらに狙われた、良い人だけ、助ける。」
そう、良い人だけ。
「助けた人を、ゲンが助ける。」
隠れ里に、目隠しをして連れてくる。託すから、あとのことは、頼む。
「わかった。でも、どうする。」
命の次に守りたい物を一つ、持ち出させる。替えの衣も、忘れずに。
こっそり、見つからないように連れ出し、言う。
「助ける。そのために、連れて行く。」
行くか、残るか。もう一度、考えさせる。
「舟に乗せる前に、替えの衣に着替えてくれ。それから、目隠しする。」
着替えさせ、着ていた衣をもらう。
早稲の村長も、ジンも、疑り深い。だから、信じさせるために、もらう。
「来ていた衣を裂いて、獣の血を付ける。」
そう、騙すために。
「で、ヤツらに渡す。」
それが人の血か、獣の血かなんて、わからない。
「良い。良い考えだ。」