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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1189/1591

13-36 呪いの花


山守の大岩から駆け付けた多鹿たかの織り人、呪い種になったカヨ。体は失ったが、その力は強い。




「ユルサナイ。」


地の底から低い声が響き、ヌッと闇が噴き出す。


「ムスメヲ、ハナセ。」


闇がブワッと広がり、カヤを肩にかついだ男が呑まれる。


「ギャッ。」



男の足元が泥濘ぬかるり、ズボッと腰まで引き摺り込まれた。低くなって直ぐ、でんぐり返しを打ったカヤは、そのまま這いながら逃げた。


その足を掴もうとした男は胸まではまり、地に腕をつけて抜け出そうとして首まではまる。



「たすけ」


頭の先まで地に埋まり、手足を動かし大暴れ。


「ニガサナイ。」


生きて戻れると思うな。


「クルシメ。」


多くの女をなぶり、苦しめたのだろう。どれだけさらった、どれだけ殺した。


「オンナノテキ。」


女から生まれたクセに、その女を傷つける。男だからとり返り、女を見下す。そんなに偉いのか、男という生き物は。


どうなんだ。






ここは地の中、真っ暗闇。息なんて出来ないし助けも来ない。



「死にたくない。」


前後左右から押し潰され、動かせていた手足が動かなくなった。


「何も見えない。」


ドッドッドと心音だけが響く。


「痛い、苦しい。もっと生きたい。」


おのが殺した女の顔なんて覚えてイナイ。けれど母の顔が、泣き顔が頭に浮かぶ。


「母さん。」




地が割れ、消えた男が吐き出されるように現れた。腰を抜かす者が多かったが、セイは横柄にあごしゃくり、若い衆に調べさせる。


「・・・・・・し、死んでるぅ。」


体の骨は折られ、胸も腰もペッチャンコ。なのに頭は潰されず、涙と鼻水で汚れた顔は恐怖に歪んでいた。


「オイ、な」


セイの口に『何か』が入り、それを飲み込んでしまう。


「ゴホッ。オイ、何をしている。まだ」


飲み込んだ『何か』が胸で膨れ、ボコッと動いた。


「多鹿ニ手ヲ出スナ。」


「狩頭?」


「逃ガサナイ。」


「えっ、アッ。」



カヨは偉山のセイに、相打ちさせる呪い種を植え付けた。男の肺で芽吹いたソレは血管に根を張り、葉を広げ、口中で呪いの花を咲かせる。



口を開くたびに呪いが広がり、アチコチで相打ちが始まった。


高盛崖を登り、生きて多鹿に辿り着いたのは十四人。一人は潰れ、十二人が相打ち。



「ワシは、なにを。」


一人、生き残ったセイが呟く。


「ヴッ。」


押さえた胸を突き破ったのは、大きく育った闇の蔦。そのまま伸びてポポンと葉を広げ、死んだ男から闇を吸い取って育つ。


「ギャァァッ。」


植えられた闇が体を、頭を奪い取り実を結ぶ。その実がはじけ、セイがバンと破れ裂けた。


そのむくろは雪のようにけ、残らず消えて無くなる。


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