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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1188/1590

13-35 どんなに強く望んでも


幾人いくびとか消えたが、偉山おおやまの男が九尋くつね山を横切った。


生き残りは狩頭かりがしら、セイを含め十四人。




「煙だ。」


多鹿たかか。」


「着いたんだ。」



煮炊きの煙を見た途端とたん、元気になった。タイヘンな思いをしてココまで来たのだ。飛びっきり整った娘を連れ帰らないと。


そんな事を考えながら。




「山守だ、山守の民が来たぁ。」


多鹿の民が震え、戦慄わななく。


「違う、落ち着け。アレは山守では無い。偉山だ。」


「おっ、偉山ぁ?」


「女と子を隠せ! 里に入れるな。」


里長さとおさが叫ぶと皆、持っていた物を落として駆け出す。






ポロロン♪


「さぁて、何を弾こうカナ。」


大岩のほらでカヨが呟く。と、その時。


「来た。」


おにだ。でも、祝辺はふりべもりでは無い。


「こんにちは。」


ジィィッ。


ひろ隠頭おにがしらほうです。」


ひろ?


「恕は伊弉冉社いざなみのやしろの忍び。死を前にして真っさらになった女の隠が多く、人のときで働く事を許された隠忍びです。」



あぁ、聞いた事がある。どんな隠でも恕と喰谷くたに山に入れば清められ、そのまま合繋谷あつぐだに滝壺たきつぼから根の国へ行けるとか何とか。


私が闇堕ちする前に。いいえ、しましょう。考えても、どんなに強く望んでも時は戻らないから。



「そのまま、お聞きください。」


投が大岩に近づき、微笑む。


「山に入っていた多鹿の娘が一人、偉山の男に攫われました。」


エッ!


逸散滝いちるだきに向かっています。崖下から引き上げた舟に乗せ、流し落とす気なのでしょう。」


ニコッ。




偉山のセイは考えた。


この滝からは行けないが、横をじ登れば上へ行ける。身軽なのを選び、縄を腰に巻かせて上がらせよう。


多く攫いたい。けれど使っていた道は潰され、もう使えない。だから若いのを幾人か、と。




「逸散滝。」


カヨが呟き、琴を静かに置く。そのまま大穴の奥へ。勢い良く地の中を進み、攫われた娘を救いに向かう。


「お気をつけて。」


投が呟き、大岩に一礼してから偉山へ。






「放して! 嫌ぁっ。」


男の背をポカポカ叩いて抵抗するも、十一歳の幼女ようじょに出来る事は少ない。


「カヤ!」


追い払ったヤツらが、里から遠く離れるまで見張る。そのために後を追った長が叫ぶ。


「里長、助けてぇ。」




カヤは食べ物を探しに一人、山に入っていた。だから里に偉山の民が仕掛けた事、女と子が隠された事を知らなかったのだ。



母は嬰児みどりごを産んだばかり、父は果畔はてべに行ってイナイ。


兄や姉は所帯を持ち、離れて暮らしていた。だからクルクル動けるのは、十一歳になって直ぐのカヤだけ。


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