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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1187/1590

13-34 気を抜くな


翌朝、木から下りたセイが見開く。


目の前に枝から落ち、冷たくなった仲間が転がっていたから。




「な、んで。」


獣ならかく、氷のように冷たい風に当てられ続け、こごえない人間など存在シナイだろう。


「残りは。」


生存者数を確認するには、目を覚まさせるしかナイ。


「朝だ、下りて来い!」


セイが大声を張り上げた。




高盛崖たかもりがけを登った者の半数が、その命を落とした。


ある者は木から落ち、ある者は幹に寄り掛かったまま、その短い生涯を閉じる。むくろは日が昇りきり、暖かくなれば獣に食われるだろう。



生き残りの中には上手うまく歩けない者、手足の指が青白くなった者、しびれて泣き出す者も居た。けれど置いて行けない。


なだすかしてしかりつけ、崖のきわを進む。




「わぁっ。」


崖下と山守から吹く風に翻弄ほんろうされ、フラフラしていた男が落下。


「アッ。」


片足が際を崩し、落ちた。つるを持っていなければ、きっと体ごと。


「帰りたい帰りたい帰りたい。」


ブツブツぶつぶつ、ブツブツぶつぶつ。




セイだって許されるなら今すぐ、大きな声で叫びたい。けれどジッと耐え、黙って進む。


かしらが何も言わないのだ。若いのがグチグチ言っても、右から左に抜けるダケ。




「気を抜くな! 歩きづらいのはココだけ。この先は開けている。」


狩頭かりがしら、断言。


「おぅ。」


「そう、だな。」


「ココまで来たんだ。」



本当は逃げ出したい。けれど前向きに考え、口ではなく足を動かす。


どんな道も一歩、踏み出す事から始まる。だから怖くても苦しくても一歩、また一歩。






「はぁぁ、着いたぁ。」


委蛇いいと崖の間を抜けた先に、原っぱが広がっていた。と言っても狭いが。


「生きている。」


偉山おおやまを出て高盛崖を登り、縄住なずみに着いた。共に喜び、笑ったアイツはココに居ない。


凍えて死んだり崖下に落ちたり、居なくなったりした。


「見張られている。行くぞ。」



委蛇山で暮らす人も、九尋くつね山で暮らす人も争いを好まない。だから余所よそ者が来た時、離れた場所からジッと様子をうかがう。



もし怪しい動きをすれば弓に矢をつがえ、静かに放つ。


追い払うために。



「急げ。」


「は、ハイ。」


谷にフラフラと吸い込まれるように、立ち入ろうとした男が慌てて駆け出した。


多鹿たかに着くまで気を抜くな。」


「ハイッ。」



委蛇と九尋の間には、白夜間はやまに続く道がある。里も村も無いが、白夜間神はやまのかみ御坐おわす。


使わしめ雪花きよはる九尾きゅうび白狐びゃっこ




山守の呪い祝テイの父、セイは雪花とセリのせがれ、萩の子孫。多鹿のカヨが呪い種になった事、テイに呪いを掛けた事も知っている。けれど手も口も出さない。


が、偉山の男が白夜間に近づけば消す!


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