13-32 偉山か
とつ守は呪い種になってしまった、多鹿のカヨをドウコウする気は無い。
叶うなら、ずっと。そう思っている。
もし清めの力を持つ誰かが力を揮っても、カヨが暮らす大岩は鎮森に守られているのでビクともシナイ。だから、ひとつ守に確かめた。
隠の守を束ねているのは、人の守ではナクひとつ守。ひとつ守に任された事は、人の守でも動かせない。
カヨが暮らす大岩を守るのは、とつ守と鎮森の民。トンデモナイ何かが起きぬ限り、カヨが害される事は無い。ハズ。
「ひとつ守、宜しいか。」
ここのつ守が声を掛ける。
「はい。」
ここのつの守は先読の力を持つ元、継ぐ子。とつ守を祝辺へ迎えた事で親代わりとなり、隠になっても世話を焼いている。
その守が、とても恐ろしい末を見た。
「それは真ですか! いえ、そうなのですね。」
「はい。」
とつ守を止めれば、偉山から闇が溢れる。集谷、燠山と深山も守られるが、白露湖と梅の湖はドウだろう。
白露湖は閉ざされている。けれど梅の湖には烈川、烈川には西望川が流れ込む。列川は喰谷山を通っているから、偉山の闇が流れ込めば大事になる。
喰隠、恕の里は守られても他は。人里は無いが獣は、闇に慣れていてもドウなるか。
「偉山か。」
あの山は酷い。酷いが他の山、手を出せぬ。その山に呪い種を植えるとは、考えたな。
「怯むな! 進め、進めぇ。」
「ハイッ。」
高盛崖を登る偉山の民。気分が高揚しているのか誰一人、泣き言を言わない。
白露湖から強い風に煽られ、少しづつしか登れない。そんな道を選んだ偉山の男たち。一人、また一人、その命を散らす。
それでも恐れず諦めず、多鹿を目指すのは命じられたから?
「産まぁす。」
「奪ぁう。」
禄でも無い理由だった。
「♪ 諦めたらソコで終わり 気付いても 過ぎた時は もう戻らないさ ♪」
ティ小のうたが愛されるのは、その歌詞にある。のかも知れない。
「♪ 今できる事すれば良いんだ 少しづつでも前に進もう いつも どこかで誰かが見てるから 先へ先へ伸ばせ 心の翼♪」
カヨのライブは、いつも満員御礼。鎮森の民、草木も楽しそう。偶に獣も集まる。
闇でも呪い種でも静かに暮らすなら、鎮森の民として受け入れる。琴を弾こうが歌おうが、ライブを開催しようが構わない。
とつ守には人だった時、先読の力が有った。
隠の守になって失ったが、今でもカンは良い。草木がイロイロ知らせてくれるので、遠く離れたトコロで何が起きているのか、知る事が出来る。
「そうですね。」
諦めたらソコで終わり。いつも、どこかで誰かが見ている。良い事も悪い事も全て。
ザワザワ。
「ふふっ、ありがとう。」