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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1184/1588

13-31 お任せください


とつ守が祝辺はふりべもりになったのは、霧山きりやまと霧山のたみを守るため。


祝辺、いや山守が乱れようが滅ぼうが、崩れようが構わない。そう思っている。



もし山守が崩れれば、なめらたいらの地にドドドと流れるだろう。山津波に押されれば霧山は、平良ひら噴水ふきみずと繋がる。いづれも大きく豊かだ。


迷い森も埋まるだろうが、あの森は強い。どうにでもナルさ。






「とつ守。少し、よろしいか。」


「はい、ひとつ守。」



ひとつ守には強い清めの力がある。もし山守に何か起こっても、闇に呑まれる前にサッと清めるだろう。


そんなおにの守が気に掛けている事の一つが、とつ守の動き。



山守社やまもりのやしろの近くに潜む闇、呪い種では。」


はい、その通りデス。


「清めますか。」


鎮森しづめもりの民が動きますヨ。


「・・・・・・いいえ。」



ひとつ守は考えた。闇の種が山守社の近くに潜むのは、いつか山守にわざわいもたらすため。もっと言えば、山守の民を根絶やしにする気なのだろうと。




山守神やまもりのかみは『生贄いけにえ人柱ひとはしらも要らぬ』とおおせだ。なのに山守の民は『山守神が御求めだ』と言って、他からさらった人をなぶり殺す。


殺して楽しんでいる。



死に絶えても。そう思った事は一度ひとたび二度ふたたびでは済まない。


だからと言って、このまま見過ごすワケには。と思うのだが、どうにも踏ん切りがツカナイのだ。困った事に。




「とつ守。山越に分社わけやしろが建てられ、めかんなぎが通っていると聞きました。まことですか。」


「はい、真です。」


ひとつ守に問われ、とつ守が微笑む。が、その目は冷たい。


平良分社ひらのわけやしろは祝辺、山越分社やまごえのわけやしろは山守。シッカリと支えてくれるなら、それで良いのでは。」



とつ守が言っている事は正しい。


祝辺を支えるのは平良、その平良を祝辺が守っている。山守を山越が支え、その山越を山守が守るなら、それで。


けれど、あの山守が山越を守るだろうか。



「山守は山守社が、社の司が人のおさとなり見張る。そう決まりました。任せましょう。」


「とつ守は、いや。」


「何ですか。」


「山越の巫は、山守を支えると思いますか。」


「思いません。巫の名はトモ、口寄せも出来ぬ娘です。山越の長、民も知っていて何も言わぬのは飾り。いや分社の守に祭り上げ、山守をあざむくツモリなのでしょう。」


ひとつ守のまゆがピクンと動いた。




分社の守。分社を守る一族の長が務め、里や村の長を兼ねる。


平良では禰宜ねぎが務めているが、見えないモノを見る目が無ければ難しい。



トモには見える目も、巫の力も祝の力も何も無い。そんな娘が、その子に、孫に務まるのか。


分社が荒れれば本社もとやしろも荒れる。そうなった時、山守は。




「山守から闇が溢れる前に、祝辺が動くでしょう。違いますか、ひとつ守。」


とつ守に問われ、黙ってうなずく。


「迷わず、清めの力をふるいます。」


「では、ひとつ守。山守に潜む闇、清めますか。」


「いいえ。とつ守に、お任せします。」


「はい、お任せください。」


ニコリ。


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