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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1182/1588

13-29 見張られている


とつ守の頭の中で呪い種、多鹿たかのカヨが歌う『ティのうた』が響く。


どう伝えるか考えて悩んでも、口に出さなければ伝わらない。そんな、うた。




「ふっ。」


琴を習おうカナ。


「とつ守、あの。」


よ。祝辺はふりべもりとして、これからドウ生きる。」




八はおにの守になって初めて、とつ守が優しく微笑むのを見た。と思った。同時に恐ろしくなり、闇に呑まれる。



「こ、こは。」


ゴォー。


「く、熊ぁっ。」




食われる。生きたまま食われる、食い千切ちぎられる。腹を、はらわたをグチャグチャと。


嫌だ、もう嫌だ。祝辺に戻りたい、帰りたい。



喰隠くおに放り込まれるような事、確かに致しました。申し訳ありません。もう決して、決して致しません。誓います。ですから、お願いします。


ここから、喰隠から出してください。




「八、聞け。」


「とつ守ぃ。」




涙と鼻水をダラダラ流し、とつ守にすがる八。その姿を見ていた、ひとつ守は思った。とつ守が恐ろしいと。



闇に呑まれた八が聞いたのは、熊の鳴き声では無い。風がひとやを抜ける音だ。そう、八が落とされたのは喰隠ではナク祝辺の獄。


とつ守に力添えしたのは光で空間を仕切り、封鎖する力を持つ、いつ守。人や物を他に移す力を生まれ持つヨリ、生き物の考えを読む力を持つスミの三隠。




「力を求めるなら強くなれ。他から得よう、奪おうと考えるな。」


「ハイ、おおせのままに。」


「キチンと言の葉にせよ。」


「私、八は力を他から得よう。奪おうと考えません。」


鼻水を垂らしたまま、キリッ。


「そうか。」


「ハイッ。」



八がズビッと、鼻をすする。その後ろでスミがコクンと頷いた。まことらしい。






「・・・・・・生きて、戻れた。」


自室で目覚めた八が、ポツリと呟く。


「夢?」


「違いまぁす。」


ふたつ守がニコリ。



対象に闇を植え付けて支配する力を持つ隠の守は、ひとつ守の言いつけダケは守る過激派。



「おや、目が覚めましたか。」


ひとつ守が微笑む。


「ハッ、という事は。」


夢では無い。とつ守に睨まれ、祝辺の獄に落とされた。



「八よ、もうしなさい。祝社の継ぐ子は弱くても、他より強い力を生まれ持っている。人の守が弱くても、隠の守が支えれば良い。違うか。」


「仰る通りで御座います。」




八は部屋の片隅に、鎮森にしか咲かない花が活けられている事に気付いた。


「とっ、とっ。」


とつ守に見張られている。


「水を持ってきましたヨ。さぁ、お飲みなさい。」


毒? 違います。清水きよみずですヨ。


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