13-27 言の葉にしなければ
集谷は燠山より強く、小柄は深山の次に強い。その深山は集谷の次に強く、大きい。どう前向きに考えても勝てない。
で、引く事にした。けれど遅かった。
「は? 若いのが足りぬとな。」
「はい、長。」
臣が項垂れる。
「舟は。」
「有りますが、山を歩いて下りてから。その、乗り込めば宜しいかと。」
西望川を舟で下れば、必ず引っ繰り返る。で皆、溺れ死ぬのだ。どうしようも無い。
ポンポン乗せて送り出した結果、若者が減った事にやっと気付く。
居るには居る。けれど出せば、きっと死ぬだろう。
子を産める女が居ても、孕ませる男が居なければ子は産まれない。子が生まれなければ人は増えない。
人が増えなければ困る、いろいろ足りなくなる。
「・・・・・・そうか。」
『子を産めぬ女など要らん』と、『醜い女は要らん』と言って殺し過ぎた。
どの里も村も人が、働き手が減ってしまった。子を育てる者が居らず、バタバタ死んだ。
「動けるのを送れ。山を下りてから舟に乗れ。」
「はい。」
ススッと臣が下がり、静かになる。
「ハァァ、遣り過ぎたか。」
気付くのが遅い。
偉山の男と山守の民の違いはイロイロあるが、一番大きいのは高盛崖の上に在るか下に在るか。
山守の村は崖の上、山守御山の上に在る。だからアチコチから攫える、奪えるのだ。
山越の娘、トモが巫になった。巫が現れたと聞き、山守から使いが出される。けれど、その全てが谷に落とされた。
山越の長も巫の母も、誰も何も言わない。
山守の民は減りに減り、トモを生贄にするのを諦めた。山越を下り、滑川沿いの隠れ里に狙いを定める。
けれど思い通りにはナラナイ。
「♪ 湧き上がる この思い どう伝えるか 考えて悩んでも 答えは出ない♪」
カヨ、琴をかき鳴らし熱唱。
山越に現れた巫は、とってもセッカチでした。深く考えず、山守から来た使いをポンポポンと処分。考えナシの山守の長、真っ青。
多鹿のカヨは山守の民が大っ嫌い。だから呪い種になり、テイを呪い祝に変えた。テイも、テイから切り離された闇も残らず清められ、消えて無くなる。
けれど残ったモノもある。
「♪ 言わなきゃ分からない『好きだ! 共に生きよう』言の葉にすれば きっと響くのに♪」
鎮森の民、ノリノリ。
『ティ小のうた』は多くのファンに愛され、歌い継がれる。
小ティや分ティのうたは・・・・・・、小学生男子には受けると思いますヨ。分かり易いから。
「ホウ、コレはコレは。」
とつ守が微笑む。
ザワザワ。
「止めませんよ。みんな、とても楽しそうだ。」
ザワザワザワ。
「そうですね。言の葉にしなければ、何も伝わりませんね。」
ザワワ。
「はい、そうします。」
とつ守が一礼し、祝社に戻った。