5-45 守が認めた、隠れ里
住める山を探して、探して。とうとう、獣谷に入った。そして見つけた。
ゲンは妹の骨を持って、姿を消した。スッと。誰にも、何も言わずに。
早稲の村長は荒れた。睨むことはあっても、従っていたゲン。だからこそ、焦っていた。
「探せ、ゲンを。ゲンを連れ戻せ!」
探すフリをした。オレだけじゃない、みんな。
「シゲ! セツがどうなっても、いいのか。」
脅された。が、黙っていた。
隠れ里は、すぐに見つかった。鷲の目に。
「こんな・・・・・・狩り人も避けるのに。」
なぜ、隠れ里を作ったのか。すべて話すと、言った。
「霧雲山の、祝辺の守に。守にだけ、お伝えする。」
それだけ言うと、食べ物をくれた。
「少ないが、足しに。」
しばらくして、鷲の目が戻った。
「霧雲山、祝辺の守の使い。守りの、言の葉。」
ゲンが平伏した。
「はい。」
「『許す。生きよ。里のこと、もらすな』とのこと。」
鷲の目が、包みを手渡した。
「獣よけだ。」
この里のことは、誰も知らん。釜戸社の祝も。だが、見つかるかもしれない。
釜戸社の、獣谷の仕置場から近い。釜戸山が噴き出した、そういう時にだけ使われる。とはいえ、近すぎる。だから気をつけろ。
そこの仕置場は、あまり使われない。川からしか来られない。だから、来れば分かる。
「それと、これを。」
「これは。」
「祝辺の守の、認め札だ。」
もし、何かを探す素振りをしたら、祝人を一人。茂みに連れ込み、見せろ。
釜戸社だけではない。祝なら、女も男も、知っている。この札が何なのか。
「見せれば、引く。必ず。」
再び、平伏した。
「生きろ。そして、救え。守が認めた、隠れ里。誰も手だし出来ない。裏切るな!良いな。」
そう言って、いなくなった。