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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1179/1588

13-26 どんなに叫んでも、助けを求めても


燠山社おきやまのやしろの三人と山長やまおさ狩頭かりがしら山頭やまがしらいくさに備え、山のアチコチにイロイロ仕掛けた。




「ギャッ。」


飛んできた矢が目に刺さり、ドタッ。


「アッ。」


足を取られて逆さ吊り、プラァン。


「ワッ。」


落とし穴の底に刺さったくいつらぬかれ、グタッ。






燠山おきやまは炭焼きが盛んなので、手入れが行き届いている。近くにそびえる、人が暮らす山の多くが戦嫌い。


好戦的なのは偉山おおやまの男だけ。



集谷あだに小柄こづか深山みやまの民も戦嫌い。


だから山守と偉山の民に仕掛けられても追い払えるよう、あらかじめ備えているのだ。






「ナッ。」


ドタッ。


「エッ。」


バサッ。


「ヒッ。」


グタッ。






燠山には先見の力を生まれ持つ祝、しらが居る。御婆と呼ばれるホド年を重ね、とっても物知り。


心の声が聞こえる禰宜ねぎさかも居る。水を操れる祝、きよは血流も止められるのだ。



加えて山を知り尽くしている三人の男。山長のツキ、狩頭のくま、山頭のまつるも力を尽くす。となれば、控え目に言って無敵。


偉山の寄せ集めに勝ち目など無い。






「山に入る前に片付きましたね。」


燠山神おきやまのかみの使わしめ、かいがニコリ。


「そうですね。」


社憑き火花ほのか、脱力。






手付かずの林でバタバタ死んだ、偉山の男たち。そのむくろを片付けるのは獣。よだれを垂らす熊さんズ、のっそノッソと近づいた。



「ギャァッ。」


逆さ吊りプランず、絶叫。


「ヲォォ。」 ウマソウ。




爪をシャキンと出し、幹に括りつけられている縄をシュパッと切った。


ドサッと落ちた獲物たち、頭がボォっとして動けない。それでも這うように走り、逃げる。




「あっ。」


ドタン。


「たす、けて。」






夏の熊は腹ペコ。血の匂いに大興奮し、ワラワラとむらがる。


腹を食い破られ、はらわたをモグモグ。ビシャッと血潮ちしおが飛ぶ。



頭からガブリと食われれば直ぐに死ねるが、腹を食われれば長引く。


アッチでもコッチでもグチャグチャ、ビチャビチャ。どんなに叫んでも、助けを求めても誰も来ない。






「まだか、まだ戻らんのか。」


偉山のおさが叫ぶ。


「はい。」


としか言えない。


「長、あの山は。燠山には強い狩り人ときこりが揃っています。一人も戻らないのは、きっと。・・・・・・皆、殺されたのでしょう。」


おみの一人が進言。


「ナニッ! いや、そうか。」


一瞬イラッとしたが、腕組みして考え込んだ。


「若いのを選んで集めろ。」


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