13-24 弱い者、優しい者
山守の民が嫌いだ。それでも、偉山の男より良いと思える。
山守の民は他の民を嬲る事でしか、『生きている』と思えぬと聞く。歪んで、いや違うな。心から気の毒だと思うよ。
「少ない。」
女が、年老いた女が減った。前に来た時よりグッと。
「嬰児、生まれて一年。」
骨が細い。
「乳を貰えなんだか。」
泣く力も無くし、弱って死んだのだろう。
「いや、男に。」
嬰児を育てていた女が死に、年老いた男が代わった。けれど育てられず打ち捨てられ、そのまま。
「獣に齧られたのか。」
骨に牙の跡が残っている。
偉山から男を消せば、残った人が幸せに。そんな事にはナラナイ。力を付けた誰かが、男と同じ事をするだろう。
弱い者、優しい者が虐げられ、扱き使われて死ぬ。
「高盛崖を登る者が足りんなら、燠山から攫ってこい!」
は?
「燠山ですか。」
あの山には強い狩り人、樵も居る。どう考えても勝てない。
「そうだ。あの山には強い男が多い、いやゴロゴロしている。」
だから、勝てないんだヨ。
「はい、わかりました。燠山へ行く、人を集めろ。」
偉山の男はオカシイ。いや待てよ、行かせよう。クックック。
「ん。」
崖下から聞こえる、この声は。
投が飛び降り、見つけたのは嬰児や幼子の骸。投げ落とされたのだろう。皆、グチャッと潰れている。
骸の傍らでボケェっとする子、寝転ぶ子、崖に凭れる子、指を銜える子など。ザッと十四、五は居るだろう。
「みんな、立てるかい。」
・・・・・・。
「そうか。ココには食べる物が無いから、私と喰谷山へ行こう。」
「くらに?」
「そう、喰谷。」
・・・・・・。
「茹でたり焼いたイモなら、直ぐに食べられるよ。少し待てば粥とか、団子も美味しいよ。」
「きゃゆ。」
「おいちいの。」
喰谷山の真中に在る喰隠には、食べられる物が少ない。けれど周りを探せば食べ物がイロイロ有るし、恕の里には田に畑、狩り人や釣り人も多い。
隠が育てたアレコレだ。隠なら触れられるし煮炊きも出来る、美味しく食べられる。
恕と共に入山すれば清められるから、お腹いっぱい食べさせ、グッスリ眠らせてから根の国に送れば良いだろう。
もう死んでしまったが、根の国へ行く前に一度でも。
「じゃぁ、行こうか。」
「うん。」
他の恕を呼び集め、子らを抱いたり背負ったり、手を繋いで偉山を出る。嬰児の手を引く幼児もチラホラ。
喰谷山へ行けば『美味しい物が食べられる』と知り、力が出たのだろう。どの子もグッタリしているが、目に光が戻った。