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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1176/1588

13-23 助けない


偉山おおやまの男が乗った舟を、エイッと引っ繰り返したのは犬のおに。川に落ちた男を川底に引き摺り込み、タップリ苦しめたのは蛇の隠。




西望川にもちがわの神が、神が荒ぶられた。」


息絶え絶えに川から上がり、ゲホゴホしてから呟く。


「ナニ言ってんの。」


ほうが低い声で一言。






偉山に御坐おわすは偉山神おおやまのかみ、一柱。


西望川の源は偉山湖おおやまのみずうみ。湖はいただきの東に在り、偉山神が御守り遊ばす。



その昔、偉山にも数多あまたの神が御坐した。けれど男が女を敬わず、虐げ楽しむようになって御隠れ遊ばす。


偉山に祝の力を持つ人が生まれナイのも、口寄せに応じナイのも全て、神のおぼし召し。






「戻すのは一人で良いかな。」


と言いながら投が、男の口に毒玉を放り込んだ。


「グホッ、何かが口に。」


バタン。






はみの隠から毒を貰い、宿木ほやの実に絡めて丸めました。安心安全の伊弉冉社いざなみのやしろ製。一粒づつ心を込めて、根の国でコロコロしたヨ。


用法・用量を守って、正しく御使いください。ピンポンッ♪






「ゲッ、真っ黒。」


始末した野郎やろうから、どす黒い闇が出てきた。


「驚きはシナイが、多いな。」


と言いながら偉山神の使わしめ朝、スタンバイ。


「アォーン。」 マヨワズ、オチロ。




地中からニョキッと闇の手が伸び、野郎の闇と魂を捕らえる。根の国に叩き込むとスッと消え、静かになった。




「投、また来たぞ。」


朝がクイッと鼻を向け、キランと目を輝かせる。


「皆、頼みます。」


隠の犬と蛇がコクンと頷き、配置についた。






「わぁっ。」


見えない何かに舟を引っ繰り返され、水中に投げ出された。


浮き上がる事なく川底に引き摺り込まれ、苦しみながら死ぬ。


「たっ」


浮き上がれたのも居たが、直ぐにブクブク。






朝と投が並んで見守る。片付くまで、黙って見守る。


朝の飼い主を殺したのも、投を殺したのも偉山の男。全ての男が悪いとは思わないが、偉山には悪い男しか居ないと思っている。


だから助けない。






「皆さま、ありがとうございました。」


投が一礼すると、隠の犬と蛇がスッと姿を消す。


「朝さま。お力添え、ありがとうございました。」


「ウム。投よ、これから回るのか。」


「はい。」




偉山には男に虐げられ、嬲られて死んだ女がアチコチにいる。おのむくろの横で膝をかかえ、ボンヤリしている女の隠が。


その全てに声を掛け、救う。それがひろの務め。



恕と共に喰谷くたにに入山すれば、どんな隠でも浄化可能。そのまま合繋谷あつぐだにの滝壺から、真っ直ぐ根の国へ行けるので迷わない。




「そうか。」



産屋うぶやや子の家で死んだ人の魂は、残らず朝とすいはらい、偉山神が御清め遊ばした。


恕を待たなかったのは、直ぐに清めなければ闇堕ちすると思ったから。



「お気遣い、ありがとうございます。」


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