13-21 何が有った、何が起こった
恕の隠頭、投は偉山にある里の出。偉山の男たちが何を考え、どう動くか。嫌と言うホド分かっている。
「酷いのは知っていたが、ココまでとは。」
偉山は山中に里や村が点在するが、閉鎖的な山である。
男尊女卑だが一夫一妻制を導入。男には選択権があるが、女は父兄に絶対服従。女腹だと冤罪を掛けられ、公開処刑。
動けない状態で喰谷山に投棄され、生きたまま獣に食い殺される事が多い。
死ぬまでボコボコ産まされるので、多くの人が暮らしているのだが・・・・・・。
「何が有った、何が起こった。」
人の、いや女の数が前より少ない。
偉山の男は女を物として扱う。田や畑の事、釣りや山の手入れ。狩りだって女にさせる。
女の数が減れば食べ物に困る事になるので、どの家も二人は残す。なのに田にも畑にも居ない。
川や山に居るのは幼子や娘で、老いた女が見当たらない。
「産屋、子の家。」
村外れに走った。
「エッ。」
ない。
里や村の外れには、幾つもの産屋が建てられていた。外れに建てられるのは、嬰児の泣き声が煩いから。
三つまで育たなければ、里にも村にも入れない。だから産めない女たちが移り住み、母の代わりに嬰児を育てる。それが偉山の決まり。
「もや、された。」
隠は生き物に触れられない。けれど物なら、ほんの少し動かせる。
「なんと恐ろしい事を。」
炭化したアレコレを取り除き、現れたのは人骨。
守ろうとしたのだろう。割れた頭蓋の骸が、その胸に嬰児を抱えていた。
鎖骨や肋に刺し傷が残る骸、頭を落とされた嬰児。足の骨を折られた幼子の骸まである。
「一隠も居ないから、きっと。」
迷わず根の国へ、旅立ったのだろう。
「私の力では、墓を掘る事は出来ない。」
ソッと離れ、動かしたアレコレを戻した。
焼き殺されたのか、殺されてから焼かれたのか判らない。けれど、きっと痛い思いをした。
辛くて苦しくて、助けを求めたハズだ。
「そうだ、偉山社なら。」
偉山神は大の人嫌い、使わしめは人に嬲り殺された犬と蛇。きっと御力を貸してくださる。
偉山社は偉山の頂にある石積みの社で、偉山に祝の力を持つ者は居ない。
昔は祝の力を選んだ嬰児に与えていたが、女を軽んじる男に嫌気がさし、付与した力を取り上げ現在に至る。
伊弉冉社の隠忍、恕。矢弦社の忍、雲には協力的。
使わしめ朝は元、狩り犬。
側頭部を割る前の薪で殴られた飼い主、瀕死の女性を守ろうと男に襲い掛かり、嬲り殺され妖怪化。偉山神に拾われ、社憑きになる。
その後、出世して使わしめになった。
使わしめ祟は偉山の男に、偉山神の生贄として嬲り殺され蛇神化。偉山社に殴り込みを掛けるも、偉山神が『生贄を御求めでは無い』と知り脱力。
社憑きにスカウトされ数年後、出世して使わしめになった。
「やぁ投、久しぶりだね。」