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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1173/1592

13-20 偉山を見張れ


山守は数多あまたの山がギュッと集まってそびえた。高盛崖たかもりがけの上に在るのが山守の御山、と考えられている。


山ごとに村や里が集まっているが、平地ひらちには隠れ里も多い。その一つが迫山せやまの里。



泡沫山うたやま鳴山おやま固山こやま常見山つねみやま蛇見山たかみやまに囲まれた平地ひらちにある隠れ里で温泉がある。


固山と鳴山の間を抜ければ行けるが、忙川せわしがわを渡って山岨やまそわを上がらなければ辿り着けない。



多鹿たかから九尋山くつねやまをグルッと回り、白夜間はやまを抜けて谷を進まなければ入れない里だ。谷が四つ、山は五つ在るので逃げられる。取り返せる。






せこは強い。だから先ず、熱吹ねぶきに仕掛けるだろう。」


熱吹だって強いが、迫ホドでは無い。


「・・・・・・確か嚴山いずやまには先見さきみ先読さきよみの力を生まれ持つ祝が居たな。」






嚴山の社の司に先見、禰宜ねぎに先読の力。祝には魂を探す闇の力が有る。継ぐ子には水や風、土の力を生まれ持つ者が多い。


分社わけやしろの守に先読、先見の力を生まれ持つ者が多くなったのは、嚴美いずみの事が有ってから。



先見の力を生まれ持つウリがさらわれ、嚴山がブルンと揺れる。多くの狩り人が山守の民と戦ったが、ウリを取り返す事は出来なかった。


最後まで諦めず、深追ふかおいしたのがマツ。






ひろ隠頭おにがしらが、この地で何をしている。」


かくさま。」


ほうが慌てて膝をつく。


「良い、話せ。」






赩は山守神やまもりのかみの使わしめ、シズエ専属の使い烏。赤目の烏妖怪で、白子だが妖力で羽色を黒くしている。


山越烏では無いがシズエに拾われ成鳥。生前、毎朝『妖怪になりたい』と願い死後、隠では無く妖怪になった。


シズエの命を受け、山越分社やまごえのわけやしろを監視中。



山越に分社が建てられた事で、もう一つ変わった。山越の隠烏おにがらすが拠点を山越の森から、分社の横に生えている大木おおきに移動したのだ。


他の烏は今まで通り、山越の森で暮らしている。






「ホウ、で。」


赩が人の姿に化け、腕組み。その目は鋭い。


「山守の民がいくさを仕掛け、他の地から人を攫うのでは。そう考え、嚴山にと。」


「嚴山。」



恕は、いや投はドコまで調べた。ウリの娘リツが父、マツと共に嚴山に戻った事を知っているなら。



「・・・・・・はい。嚴山には先読や先見の力を生まれ持つ人が多く、分社の守を務める御婆おばばに頼めば誰か、見える人に頼んでくれるのでは。そう考えました。」


何だ、気の所為せいか。


「嚴山は守りが固い。山守が仕掛けても負ける。」


「はい。山守が仕掛けるなら隠れ里、熱吹か迫だと思います。」






鋭いな。が投よ、甘いぞ。


嚴山に戻ったマツはリツを御婆に会わせ、分社の守に据えた。ウリが残してくれた宝を、娘を山の外に出さずに守るため。


おのが死んでも困らぬよう、しっかり考えて。



リツにはウリと同じ、先見の力が有る。


山守の民が攻め込むのを見て、あの子は父と伯父に伝えた。直ぐに迫と熱吹に使いが出され、戻ったと聞く。






「投、偉山を見張れ。高盛崖の上にある里や村で、他と結ばず残る隠れ里は一つ。多鹿だ。」


ハッ! あの里は狩り人が多いが、他と結ぶ事を恐れている。


「今から向かい、調べます。では。」


キリッ。



一礼してから立ち去り、サッと崖から飛び降りた。


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