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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1172/1590

13-19 飾りだったのね


山守のたみは歪んでいる。他の誰かを虐げなければ、なぶらなければ生きてゆけない。そんなバケモノが揃っているのだ。


村も里も、特に隠れ里の民は『山守』と聞くダケで怯えた。




「話には聞いていたが。」


こりゃヒドイ。




『山越にめかんなぎが現れた』と聞き、『山守神やまもりのかみささげよう』とか『にえを御求めだ』と言って大喜び。


山守神は『生贄も人柱も要らぬ』とおおせだ。


なのに山守の民は聞き入れず、殺し続ける。そんなのが押し寄せればドウなるか、考えるマデも無い。






「また来たのか。」


山越分社やまごえのわけやしろの守、トモが鼻で笑う。


「山越の巫よ。山守神のぉっ。」


ジタバタ、ジタバタ。


「谷に落とせ。」


「ハッ。」



慣れた手つきで猿轡さるぐつわめ、両手両足を縛り、山守から来た使いをかつぐ。で、ポイッ。



「山守の民って、多いの?」


交代で分社に詰める若い衆に問う。


「さぁ、どうでしょう。」


山越で生まれ育った男の多くは、山越から出ない。出るのは狩り人やきこりくらい。






ドスドスドスドス。


「山越のトモだな。来い! 山守神が生贄を御求めだ。」


またか。


「やっちゃって。」


「はい。」


「ナッ、何を。」




不機嫌で人を寄せ付けないトモは八歳。そんな幼児おさなごに見下され、猿轡を填められた男は知らない。


両手足を縛られ、ポイされる事を。




「フゴムゴ、フムゴォ。」 オイコラ、ハナセェ。


ジッタンバッタン。


「おぉい、手を貸してくれ。」


「また来たのか。」


山守の使いを崖下にポイして戻った若者が、あきれながら呟く。


「頭を叩いて黙らせるか。」


サラッと恐ろしい事を言い出した。


「ナニそれ、楽しそう。」


トモの目がキラキラ輝く。


「トモさま、イケマセン。トミさまに叱られますよ。」


「じゃぁ、パコンで引きます。」


と言いながらゴンと思い切り、拳骨げんこつを食らわした。






プッ、ナニあの子。山越に現れた巫って、飾りだったのね。


山越の長は山守に母や姉を奪われ、恨みを抱いていた。だから扱い易い子を巫に据えて、山守を誘き出したのかしら。



まぁ良いわ。


山守の民が減れば、それだけ殺される人も減る。今の長が生きているウチは、山越が荒れる事は無いでしょう。






「祝辺の守は知っていて、黙っているのかしら。」


とつ守は知っている。でも人の守、ひとつ守は。


「山守にも考える頭を持つ人が居る。山越から攫うのを諦めて他の村、いいえ隠れ里を狙うわ。ココから近く、連れ去れるのは。」




滑川なめがわ沿いならせこ熱吹ねぶき列川たけがわ沿いなら多鹿たか、崖を上れば果畔はてべも危ない。


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