5-44 隠れ里を作ろう
早稲の村長に狙われた命。悪人もいた。けれど、良い人が多かった。そんな人たちを守れる人は? 村は?
何も悪いことをしていない、守らなければいけない。わかっていても、匿ってくれる人も村も・・・・・・。
早稲の村長は、村に入ることを禁じても、動じない。ズカズカ入り、罪を重ねる。
もし、早稲の村長に狙われた、そんな人を村に入れらたら。そう、荒らされる。早稲の村人に。
「早稲の他所の」人たちは、命じられても断る。従うふりをして、逃がす。だから、早稲の村人に命じる。
従わせるために、早稲の村長は言った。
「村外れで暮らすか。」
そう言われれば、従う。虐げられたくないから。それに。女に、子に。あんなコト、させられない。
「そう思うなら、するなよ。」
いつだったか、そう言った。
「黙れ、よそ者。」
そう言われ、呆れた。
何はともあれ、ないなら、作るしかない。
「シゲ。オレは、逃げる。」
ゲンが言った。オレと同じ、妹を質に取られた男。その妹が死んだ夜、呼び出された。そして、聞かされた。
「そうか。生きろよ、ゲン。」
「ああ、生きる。村を作る。」
「ん。」
「シゲ、手伝ってくれ。」
早稲の村長が奪えと言う。なぜなのか、聞いても答えない。だから悪い人か、良い人か。しっかり見定めてから、動いた。
罪を犯す、犯していたなら、悪い人。躊躇うことなく、グザリ。
誰も傷つけず、助け合って生きる人は、助ける。
まず、攫う。そう難しいことではない。『早稲の村長から、命を奪うよう言われた。』そう言えば皆、おとなしくなる。
離れた村の近くまで、見つからないように連れて行く。
「生きろ。生き残れ。」
そう言って、食べ物を渡す。少ないが、ないより良い。
これまで、そうして助けた。助けてきた。でも、早稲の村長に見つかり、酷いことになった。
「オレはな、シゲ。多くの命を奪ってきた。何も罪滅ぼし、なんて思わない。オレの罪は消えない。でもな、助けたいんだ。オレの妹や、お前の妹。他にも、さ。とても言えないようなコト、させたくないんだ。救える命、すべて救う。守りたい。」
「わかった。手伝う。で、アテは?」
「ない。」
「ないのかよ。」