13-10 どうすれば
とつ守から多鹿に伝わる話を聞かされ、カヨは酷く驚いた。けれど『力になりたい』と言われ、もっと驚く。
「山守社は山守や山越の民が何を言っても、『呪い祝が消えて無くなるまで祝を選ばぬ』と決めました。」
「エッ!」
あっ、シマッタ。
「呪い祝、テイは消えて無くなりました。けれど山守神も使わしめ、シズエさまも祝を選ばぬ。置かぬと決め為さったトカ。」
そう、ですか。
「カヨさま。もし霧雲山に禍を齎すなら、消します。」
「何を。」
消すと脅され、カヨが思わず洞から飛び出した。が、ヒョイと摘ままれジタバタ。
「何を為さりたいのですか。」
とつ守に問われ、カヨが口を噤む。
「そんな目で見ないでください。私は『手を出すなら、山守の民と山越の民ダケにするように』と御伝えしたくて、ココに来たのです。」
にっこり。
「・・・・・・真、ですか。」
とつ守に摘ままれ、プランプランしていたカヨが問う。
「はい、真です。」
ニコッ。
「では、山守社の」
「ソレはイケマセン。」
キリッ。
「山守社の人には、手を出さないでくださいネ。」
ケッ。
「そうそう。祝辺の獄に許し無く入れば、直ぐに清められマスよ。」
それは良い事を聞いた。
「ありがとうございます。」
一度、確かめねば。
「どう致しまして。」
とつ守がプランプランしていたカヨを、大岩の洞にソッと戻して微笑んだ。
「では、また。」
カヨの願いは、山守と山越の民を根絶やしにする事。己と同じ思いをする女を無くす事。
山守社から呪い祝、テイが消えたのだ。遣り口を変えなければナラナイ。
「とりあえず、確かめるか。」
洞の奥から祝辺の獄へ行き、チョンと壁に触れてみた。
「ウッ。」
指先がピリッとして、ちょぴり焦げた。
「真だったか。」
クルンと方向転換し、山守へ戻る。
山守社には巫も覡も居ない。
昔は居たが巫が、ウロが器を求めていた妖怪と力を合わせ、祝に取り憑いて取り止めさせた。
祝が選ばれず、巫も覡も居ない。となると、どうすれば山守と山越の民を消せるのだろう。
「フゥ、困った。」
大岩の上にチョコンと腰掛け、溜息を吐く。
「悩み事ですか。」
山守神の使わしめ、シズエが微笑む。
「はい。・・・・・・えっ!」
「山守から巫が出る事はアリマセン。」
ニッコリにこにこ。
「山越の民から巫が出ても良い、というコトでしょうか。」
カヨに問われ、微笑み続けるシズエ。カヨは『山越からなら良い』と判断し、頬を染めた。
「ありがとうございます。私、山越を調べようと思います。」
「はい。お気をつけて。」