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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1162/1588

13-9 知らなかった


多鹿たかのカヨが、ほらの奥で琴を弾く。その音色に心躍こころおどらせる、鎮森しづめもりの愉快な仲間たち。



「♪ 翼があれば飛べると思う いつでも空へ飛べると思う だけど私は鳥じゃナイから 飛べないけれど諦めない♪」




多鹿で幸せに暮らしていたのに、イキナリ現れた山守の民にさらわれた。『祝の力を隠し持っている』と言われ、問答無用で連れ去られた。


祝の力など無いのに。



山守の全てを呪いながら死に、闇落ち。呪い種になった。


白夜間神はやまのかみの使わしめ、雪花きよはるに『闇より薄く、水より濃い何か』と表現されたが、良く分からない。



願いは一つ。祝辺深部と山守を行き来しながら、山守断種計画を実行する事。山守と山越の民が居る限り、霧雲山の統べる地は乱れ続ける。


それがタカの考え。




「♪ いつか あの空へ行こう 夢はかなえるためにあるから♪」




ティのうたを聞くまで、ずっと一人ぼっち。一度ひとたびでもにくしみをいだけば、どんなに願っても消えてくれない。


ずっと、ずっと苦しみ続ける。



逃げたくても逃げられない。忘れたくても忘れられない。そんなモノに絡み取られ、身動きが取れない。


どす黒い闇の中、声が涸れるまで叫んでも一人きり。



何も変わらず誰も来ず、闇におぼれて沈むダケ。



カヨにはティ小のうた、琴の音が光だった。ティ小にもカヨにも翼は無い。鳥じゃナイから飛べないけれど、琴を弾きながら歌うコトは出来る。



弾く事が、うたう事が救いになると知り、嬉しくなった。だから琴を弾く。うたを歌う。


誰も聞いてイナクても、求められなくても構わない。




「ん! この感じ。」


祝辺はふりべの守。


「強いから名乗れない、おにの守に違い無い。」


ピリピリするから清め、闇、光、先読も違う。残るは、とつ守。




愛用の琴を静かに置き、洞の奥から地に潜る。


とつ守が何を考えているのかサッパリ分からないが、こちらかから姿をあらわすのは良くない。そんな気がする。






「こんにちは。」


とつ守が大岩の洞をのぞき込んだ。


「おや、何か有りますね。」


と言いながら、洞の奥から琴を取り出した。


「ホウ、良く出来ている。」


ポロロンと奏でてニッコリ。




ペシッ。ペシペシッ。


「おや、おこらせてしまったね。」


鎮森の良い子たちにペシペシされ、とつ守が驚く。微笑みながら琴を、洞の中へソッと戻した。


「元に戻しましたよ。」




サワサワ。サワサワ。


「そうですか。」


???


「私は祝辺の隠、とつ守です。呪い種さん。これから話すのは多鹿に伝わる、古い話です。お聞きください。」


エッ、多鹿の昔話って。



「山守の全てを呪いながら死んだカヨのむくろは腐って、悪い臭いがするまで穢され続けた。闇落ちしたのも、呪い種になったのも当たり前。だからカヨは根の国へ行かず、人のときとどまって山守の祝に憑いた。そう伝え、受け継がれていると聞きました。」


知らなかった。全て、全て伝わり、残っていたなんて。


「私はね、カヨさまの力になりたいのです。」


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