5-43 出来ることを、しっかりと
夕餉を食べた。それから。
「ここは冷える。凍えないように、くっついて寝るんだ。いいね。」
「はぁぁい。」
子らは皆、晴れ晴れとした顔をしている。
「うんうん。好い子だ。」
ノリが大きく頷いて、言った。
「クゥゥン。」 オレハ。
「ノリコも、イイコ、イイコ。」
犬を撫でるノリ。いつも通り。
朝、確かめた。凍えていないか、生きているか。
「良かった。」
怖かった。子は温かいが、くっついていても、凍えてしまうかもしれない。
家には犬を入れた。凍えないように、温めるように言い聞かせて。それでも、怖かった。
「シゲ、おはよう。」
「おはよう、ノリ。」
「ひ、冷えるなぁ。」
首をすくめる。
「ああ。前に来た時、凍りかけた。」
「エッ。」
「一人だったからな。」
「そうか。良かった。」
「ん。」
「凍えなくて。」
「ああ、良かった。」
朝餉を食べて、一息。そして。
「ノリ、カズ。木を切る。」
「任せろ!」
「コタ、コノ。森で食べ物を探す。」
「わかった。」
「シン、見張りを。オレは狩りに出る。子らは」
「ワワン、ワン。」 オレタチモ、イルゾ。
シゲコとノリコ。尾を振って、待っている。
「ヨォォシ、ヨシ。イイコ、イイコ。」
ノリがノリコを撫でる。オレは、シゲコを撫でた。
「ノリコは子らと森へ。シゲコはオレと狩り。いいか。」
「ワン。」 モリ。
「ワン。」 カリ。
賢い犬だ。
誰が、誰と、何をするのか。子らが目を輝かせている。そうだ。出来ることを、しっかりと。
他の山に比べて、この山は冷える。近くにある山より、冷える。とても冷える。
奥にあって、頂きには泉。川も流れて、村を作るのに、とても良い。なのに、誰も住んでいない。
隠れ里を作るために、いろんな山に入った。この山を見つけた時、ここにしようと思った。そして、試しに一晩。で、やめた。寒すぎた。
考えようによっては、狙われない。戻れないし、戻る気もない。冬さえ越せば、生きられる。いざとなれば頼ろう。ゲン。落ち着いたら、会いに行くか。