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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新生編
1157/1588

13-4 疑っているのでは


むくろの、それも頭の近くにそなえられていた。葉で作られたうつわに水、小さくて白い花が添えられている。


なのに、どこにも歩いたあとが無い。




靄山隠もやまおに、いやひろか。」


流離社なばのやしろ禰宜ねぎ、サクが呟く。


いづれも違うでしょう。」


靄山隠のかしら、タンが微笑む。


「天霧山、矢弦社やつるのやしろの影ですか。」






矢弦社の忍び『影』。祝に仕える隠密部隊でおにや妖怪など、見えないものを見る力を生まれ持つ。腕っ節の強さは桁違いで、熊でも軽く倒す。



『靄山隠』は隠、『恕』は隠と妖怪で構成されている。けれど『影』は野比社のびのやしろの忍び『木菟ずく』、野呂社のろのやしろの忍び『鷲の目』と同じ、生身の『人』である。


痕跡を完全に消す事など不可能。



霧雲山の統べる地には他にも天立山あまたてやま糸游社いとゆふのやしろの忍び『月』。月見山、水月社みつきのやしろの忍び『ひの』など、多くの忍びが居る。


けれど祝社はふりのやしろの許し無く、霧雲山に出入りできる忍びは『影』だけ。






「違います。この感じ、呪いのたぐいですね。」


微笑むタンを、サクが黙って見つめる。


「それはまことですか。」


『信じられない』と顔に書いてある。


「真ですよ。」


サラリ。




くどい様だが、サクは強い守りの力を生まれ持つ禰宜。


継ぐ子の時から高をくくり気を許す事なく、気配りも怠らず努め続けて今のおのがある。そう信じて疑わない男だ。



呪いだろうが何だろうが、いやナゼ気付かない。


守りの力を搔いくぐって入り込んだ? 閉じ込められる事なく通り抜けた? そんな事ある・・・・・・のか。




「そんな。」


流離山を丸ごと包み、守り続けている。なのに全く気付かなかった。靄山隠や恕、天霧山の影なら諦めがつく。けれど、呪いの類って。


「山守の祝、テイに憑いた呪いでしょう。」


恕の隠頭おにがしらほうが言い切る。


「エッと、それは真ですか。」


「はい、真です。」






靄山社もやまのやしろの忍び、『靄山隠』は靄山社の社憑き。それも隠のみで構成。抜群の機動力を誇り『隠忍び』の異名を取る強者つわもの揃い。


発案隠で初代隠頭、かにわは使わしめに出世したので辞職したが、今でも強い影響力を持つ。




伊弉冉社いざなみのやしろの忍び、『恕』は人生を達観して死んだ女人の隠を中心に構成。


人のときに居るが伊弉冉尊いざなみのみこと公認の隠忍びなので、どんな隠でも恕と喰谷くたにに入山すれば浄化可能。


そのまま合繋谷あつぐたにの滝壺から根の国へ行けるので、陥れられ居場所を失い、絶望して死んだ隠を喰谷に連れ帰り、根の国へ送る活動を続けている。






うたがっているのではアリマセン。けれど、その申し上げにくいのですが。」


サクには、どうしても信じる事が出来なかった。


「呪いの類なら清められる、と思います。」


流離の社の司には強い清めの力、祝には光の力が有る。流離山に入った瞬間、浄化されるハズ。なのにナゼその呪いは、呪いの類は出入り出来たのだろう。


流離神なばのかみが御許し遊ばしたか、『わざわいもたらさぬ』と御考え遊ばしたのでしょう。」



今まで良く分からなかった事が突然、はっきり分かるようになったサク。頭がスッキリする。


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