表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
暗風編
1153/1588

12-71 暗がりに鬼を繋ぐ


祝辺はふりべひとやに入った雪花きよはるティ、寿ほぎはティあんが隔離されているおりの前で歩を止めた。


二つの檻は斜向はすむかい。妖狐と妖犬が見合い、頷く。






「山守の祝、ヨキから切り離された闇。」


本ティ、ビクッ。


「言い残す事は。」


闇なので、舌が無いので話せません。


「・・・・・・そうか、わかった。」


???


「山守の祝から切り取られ、石室に隠された闇。」


ティ闇、ドキッ。


「言い残す事は。」


本ティ同様、舌が無いので話せません。


「・・・・・・そうか、わかった。」


???



祝辺の獄にある檻の中で壺ごと、狐火に焼かれ消滅した。


壺の外で何か起きたのか、本ティにもティ闇にも分からない。けれど白と青の炎に包まれたので、狐火にヤラレタのは判ったハズ。



獄の奥から風が吹き、揺らめくほのおが妖しく微笑む。






「ヴゥゥ。」


ゾクゾクと寒気を感じた寿が闇を目で追い、低くうなった。視線の先には何も無い。が、『何か』が居る。


「フゥ。」


スッと目を細め、人の姿に化けた雪花。視線を上げて息を吹き、光の花吹雪を降らせた。風の流れが可視化され、寿の目が鋭く光る。


「ヴォォン。」


逃げるように闇に吸い込まれた風に向かい、寿が咆哮ほうこうを上げた。と同時に光の雨が降り、祝辺の獄が隅隅すみずみまで清められる。


「・・・・・・。」


人の守、ワケが分からずポッカァン。




全て、最初から最後まで全て見ていた。なのに解らない。


白夜間神はやまのかみの使わしめ、雪花は妖狐。沼垂ぬたりの社憑き、寿は妖犬。『妖怪は隠に出来ない事が出来る』と、ひとつ守から聞いて知っている。


なのに頭が追いつかない。




「な、にが。」


どうなっている。


「ありがとうございました。」


とつ守が、雪花と寿に頭を下げた。


「ありがとうございました。」


人の守が慌てて、頭を下げた。


「はい。」


人化を解いた雪花がニコリ。


「では、また。」


寿、尾をフリフリ。






タッタッタと空中を駆け上がり、クルンと仲良く一回転。雪花は北東、寿は北西へ。二妖を見送った祝辺の守は、とつ守を除きヘナヘナと地にしゃがみ込む。


山守の呪い祝、テイの闇が消えたのに震えが止まらない。



テイはセイとヒサの娘。セイは狐と人の合いの子、はぎの子孫。


ヒサは山守の祝女はふりめだったカズの私生児。薄いが雪花の血が流れていたので、狐火で消滅できたダケ。


もし他の狐だったら? 雪花が使わしめで無ければドウなっていたのだろう。






「怖い。」


人の守が漠然とした不安にさいなまれる。


「終わってイマセンからね。」


とつ守の、たった一言にギョッとする一同。


「テイの闇が消えて無くなったダケで、呪いの種は残っています。」






雪花と寿に清められた祝辺深部で、暗がりに吹く風が巻き上がる。そして音も無く、四方へ。


「ふふふふふ。」


奥底が知れず、気味の悪い『何か』が笑った。



暗風編でした。新生編に続きます。お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ