12-70 連鎖
ウロとムロが嬉しそうにクルクルと舞う。そんな二人を微笑みながら、優しく見守るヴァン。三つの魂を見送った雪花と寿は、急ぎ祝辺へ向かう。
「ひとつ守。テイの闇、焼きに来ました。」
雪花がニコリ。
「祝辺の獄、開けてください。」
寿もニコリ。
雪花も寿も笑顔だが、目は笑ってイナイ。テイから解放され、旅立つヴァンたちを見て思ったから。『少しでも早く、テイの呪いを無くさなければイケナイ』と。
呪いを解除できるならソレが一番だが、強過ぎて手も足も出ない。初めての呪い祝はテイだが、その呪いを掛けたのは多鹿のカヨ。
「思ったよりドンヨリしてマス。」
地下牢だからネ。
「狭間の地より上ですが、祝辺の底ですから。」
人の世だヨ。
奥へ進む度、ポポンと火の穂が出る。耳がキィンとはるホド静かで冷たいので、気を抜くとフラフラ引き寄せられてしまう。
そうなると火傷では済まない。
火力調整も消火も瞬時に行える狐火と違い、延焼を防ぐのは困難。慎重に取り扱わなければ辺り一面、火の海になるだろう。
カタッ。カタカタカタ。
「く、来る。妖怪が近づいてくる。」
壺の中で怯える本ティ。
「蛇じゃない。だから何だ。」
『死にたくない』と叫ぶ切ティの、『助けて』を叫ぶ小ティの声が聞こえる。聞こえるんだよ、今でも。
「切ティは狐、小ティは川亀に殺された。」
何れも『使わしめ』ではなく『社憑き』。でも、それでも強かった。
「ヨキめ!」
ルイの後任に選ばれた元、祝人頭。祝の力は弱いが、ヨキには人望が有った。そのヨキから切り離された本ティは壺に封印され、祝辺の獄で隔離中。
野比と野呂、二社の合作は恐ろしく丈夫で清らな逸品。本ティが本気を出してもビクともシナイ。
山守神の使わしめ、シズエから持ちかけられた話を聞き、ヨキは思った。『山守神に仕える人を、社の皆を守るにはコレしかない』と。
大貝神の使わしめ、土の糸を体内に取り込み立候補。その時『選ばれちゃったよ』な演技を披露し、テイを騙す事に成功。
その魂は山守では無く鎮森へ向かい、鎮森の民として魂を救う活動を続けている。
カタッ、カタカタ。カタカタカタッ。
「来るよクル来る、近づいて来るぅぅ。」
壺の中で怯えるティ闇。
「四つ足だ。四つ足が、四つ足がぁぁ。」
山守の祝に憑いて、馴染んでから切り取られた。山越の輪の外、石室に隠されたのに・・・・・・。
「雷が落ちなければコンナ事に、こんな事にナラナカッタのに。」
石室が落雷で破壊され、投げ出された闇ティ。着地に失敗した?雷獣の骸を奪った事を後悔する。
「猫が、猫又が来る。」
闇の力で腐敗せず動いていたが、流の爪でバサッと切り離された。
雷獣の骸は流により投げつけっ、コホン。天帝の元に戻された骸は、天獄で手厚く葬られる。
ティ闇は壺に封印され祝辺の、本ティとは違う獄で隔離中。白泉と靄山、二社の合作も恐ろしく丈夫で清らな逸品。闇ティが本気を出してもビクともシナイ。
カタッ! カタン!
本ティと闇ティ、仲良く硬直。