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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
乱雲山編
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5-42 入山

舟に乗るのは三人。食べる物、山に着くまでの飲み水。その他、もろもろ。ゆとりをもたせて、積み込んだ。


舟、十一隻。先には、シゲの舟。殿しんがりには、ノリの舟。真ん中には、カズの舟。間に、コタの舟、コノの舟。


ゾロゾロ、ノロノロ。ギィ~、ギィ~。見守るおにたちの成せる業か。他の舟と一度も、すれ違わなかった。




鳥の川だ。やっと、ここまで来た。いや、ここからだ。大岩が見えた。早川。は、早い。漕いで、漕いで、底なしの湖へ。玉置が近い。休まず、鮎川へ。


森川に入って、しばらく進む。・・・・・・何か、いる。


「ワン、ワワン。」 ココ、ココダヨ。


イヌだ。迎えに来てくれた。尾をブンブン振っている。


「もう少しだ。」


そう言うと、子らがホッとして、笑った。




森川は深いが、流れの早い、細い川だ。奥まで進み、舟を降りる。ここから、緩やかに上がる。深さはあるが、難しい。だから降りて、引っ張る。舟を傷つけないように、左と右から。


平らな所まで進んで、ゆっくりと舟を寄せる。滝の湖が、舟寄せだ。十一隻、すべての舟が入った。見た目より深いので、気をつけなければ。


川は、頂きにある泉から、森川まで続いている。滝の上まで運んで再び、というのは難しい。クネクネしているし、浅い。だから、ここまで。



手分けして荷を運ぶ。山は険しいが、子でも行ける道がある。冷えるが、村を作るには良い山だ。幸いなことに、前に来た時のまま、誰も住んでいなかった。


「シゲ、どうした。」


「いや、何でもない。」


シンが笑った。笑わないヤツと思われているが、良く笑う。


「さあ、荷を降ろそう。」




「ヨイショッ、ヨイショッ。」


子らの掛け声が、心地良く響く。とても楽しそうに、力を合わせて。


ノリたちが、仮の小屋を建てている。狩り人の小屋が使えない時の、組み立て式の小屋。


帰る時、ばらばらにする。で、また使う。手慣れたものだ。



早稲を出たのは、朝、早く。舟に揺られて、ここまで。舟中ふなあたりした子もいた。もうスッキリしたようで、笑っている。


「クゥゥン?」 ドウシタノ?


優しい犬だ。


「シゲコ、うん。シゲコにしよう。」


ノリが頷き、言った。


「何だい?」


「イヌの名さ。引き取っただろう? シゲの子だから、シゲコ。」


思わず、吹き出す。


「ハハッ、そうか。どうだい? シゲコ。」


ノリの子だから、ノリコ。オレの子だから、シゲコか。分かりやすくて、いいじゃないか!


「ワン、ワワン。」 ウン、キニイッタ。


シゲコです。よろしくお願いします。


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