表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
暗風編
1147/1588

12-65 呪いの核


霧雲山にいる、人の忍びは木菟ずくと鷲の目。おにの忍びは靄山隠もやまおにひろ



恕は人生を達観して死んだ、女人にょにんの隠を中心に構成。おとしいれられて居場所を失い、絶望して死んだ隠を喰谷に連れ帰り、根の国へ送る活動を続けている。



人のときに居るが伊弉冉尊いざなみのみこと公認の隠忍びなので、どんな隠でも恕と喰谷くたにに入山すれば浄化可能。そのまま合繋谷あつぐだにの滝壺から根の国へ行ける。


ちなみに左牙さきでも右牙うきでも、好きな滝壺を選べマス。






「見送った隠から何か、聞いたのか。」


タンがほうに問うた。


「『山守で死んで、呪いの種になった娘が居た』と、多鹿たかの娘が言いました。」


「その娘、根の国へ?」


「はい。」






偉山おおやまは山中に里や村が点在するが、閉鎖的な山だ。


男尊女卑だが一夫一妻制を導入しており、男には選択権があるが女は父兄に絶対服従。女腹だと冤罪を掛けられ、公開処刑のうえ喰谷山に投棄される。



偉山にある里で生まれた投は十二になると直ぐ、親に強制されて結婚。娘を三人出産する。


末娘誕生の翌日、夫の不倫相手が男児出産。婚家と妾から夫を『毒で殺そうとした』と責められ、里の皆が見ている前で袋叩きにあった。


動けなくなると、そのまま喰谷山にポイ。



生きているのか死んでいるのか判らないまま、ボンヤリと『悪い事をしなければ生きられない、そんな人を憎んでも闇に染まるだけ。いつか罰を受けるでしょう』とさとりを開いて死亡。


隠になった投は里に戻らず、合繋谷に飛び込んで根の国へ行く。



伊弉冉尊から『同じように苦しむ隠を清め、こちらへ送りなさい』との言葉をたまわり涙した。


人の世に戻った投は『恕』を結成し、むくろの側で膝を抱えて闇堕ちした隠を救い続けている。






「呪いの種となったのは、多鹿たかの織り人カヨ。」


スッと背筋を伸ばし、投が口を開く。






人とは思えない、整った姿形をしていたカヨは山守の民に『祝の力を隠し持っている』と言われ、問答無用で連れ去られた。


祝の力など無いが、有ると思われているのだ。酷い扱いは受けないだろう。そう思ったのに里を出て直ぐ、森の中で山守の男に穢される。



『山守に着けば死ねる』と思った。


なのに『離れ』と言う名のひとやに入れられ、逃げられないのに手足を縛られ、舌を噛み切れないように猿轡さるぐつわめられ、朝から晩まで・・・・・・。



山守の全てを呪いながら死んだカヨの骸は、死臭が酷くなるまで穢され続けた。闇落ちしたのも、呪いの核になったのも当たり前。






「だからカヨは根の国へ行かず、人の世に留まって山守の祝に憑いた。そう伝え、受け継がれていると聞きました。」


「・・・・・・酷い話だ。」


やっとの事で声を絞り出したタン。


「恐ろしい事をする。」


そう言って、かにわが目を伏せた。


「私は思うのです。カヨが山守を、いいえ。山守の種を絶やそうとしていると。」


・・・・・・。


「呪われた祝は生贄いけにえ人柱ひとばしらを求めますが、皆『山守のたみから出せ』と言っていた。違いますか。」


その通り。


「山守のおさやら何やらは揃って、『山守の民を差し出しても何も変わらない』と思った。だから従っている、聞いているフリをして他から。」


「テイの闇を消して無くせても、カヨの呪いは消えない。という事か!」


投の言葉をさえぎり、叫ぶように樺が言う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ