12-64 小学生男子か!
闇を抱えている人に『神口』と偽って近づき、吸い取れるだけチュウチュウする。山在で取り込めるダケ取り込んで、タプンタプンになったら出発!
「何だろう、闇がゾワゾワする。」
ティ小が呟く。
「楽しい事を考えよう。次は・・・・・うん、シットリしたの良いな。」
次のライブで発表する新曲、バラードに決定。
「♪ 闇の中一人うた歌うよ ティ小は何時だって 夢を忘れない♪」
琴を爪弾きながら歌うティ小、視線を感じて瞼を開く。ソコに居たのは獣でも隠でもなく、どす黒い闇の塊だった。
怖くナイけれど辛くて苦しくて、逃げ出したいのに逃げられない。そんな感じがして悲しくなる。
歌おう。この闇が抱える何かが消えて無くなる事はなくても、ほんの少しでも心が軽くなるなら歌おう。
「♪ 止まない雨は無い 明けない夜も無い いつだって光は心の中 泣いても良いよ溜め込んだら 涙の泉が枯れてしまうから♪」
スゥっと消えた闇の塊が、ほんの少し薄くなっていた気がする。嬉しくなったティ小が『これからも歌い続けよう』と呟くと、洞の隅で闇がピョコピョコ跳ねた。
この洞の口は北にあり、奥まで光が届く事は無い。川沿いにあるのでシットリしている。大木に登れば喰谷山が見えるし、喰隠から呻き声が聞こえそう。
だから、なのかも知れない。いろんな闇が集まるのは。
「♪ フンふんフンふん魚の糞ん フンふんフンふん狸の糞ん フンふんフンふん鹿の糞ん フンふんフンふん人の糞 臭いっ♪」
小学生男子か!
残念ソングを歌いながら、狩山から流離山へ向かう分ティ。ノリノリなのは霧雲山に四つ、テイの闇反応を確認したから。
分ティが取り込めば分ティ人の中で、五つの闇が融け合う事になる。ワクワクが止まらない。
「残り、五つか。」
靄山隠の隠頭、タンが呟く。
「まぁ二つ、消えて無くなりましたし。」
靄山神の使わしめ、樺が微笑む。
「眠っている獣は、テイに従わないと思います。」
サラッと会話に混じる隠忍び、恕の隠頭。
「・・・・・・いつから居たの。」
タンに問われ、投が笑って誤魔化した。
霧雲山系に残るテイの闇は五つ。
一つ。山越の外れの水脈で仮死状態にある合成獣、ヴァンに植え付けられたモノ。
二つ。野比社と野呂社の合作壺に封印され、祝辺の獄で隔離中。歴代山守の祝に憑いていた本ティ。
三つ。白泉社と靄山社の合作壺に封印され、本ティとは違う獄で隔離中。石室に隠されていたティ闇。
四つ。忙川から滑川に流れた闇が洞窟に逃げ込み、力を得るため他の闇を流し素麺の要領で掬い上げ吸収。流離山の洞に潜むティ小。
五つ。ティ小が掬い損ねた闇が望月湖に流れ込み、時間を掛けて融合。不屈の精神で肉体を得た分ティ。
テイから切り離された闇が集まり融合、力を付けるも消滅した闇は二つ。
一つ。忙川から烈川に流れた闇が喰谷山の鍾乳洞に入り込み、力を得るため他の闇を流し素麺の要領で掬い上げ吸収。フサに破れた切ティ。
二つ。切ティが掬い損ねた闇が梅の湖に流れ込み、水中のど自慢大会を開催して他の闇を吸収。シナに破れた小ティ。