12-61 分ティの辞書に圏外は無い
荒ぶる分ティ、紫海胆のようにツンツン。
『どうして良いのが見つからない』とイライラし過ぎて、明日の体が悲鳴を上げる。高血圧症でも動脈硬化症でもナイのに、脳出血で倒れそう。
闇玉発射に必要なのは分ティの気力、意力、念力ダケではない。明日の精神力と生命力が必須。それを合計十回、景気よく打っ放す。
とドウなる?
「お願い、もう止めて。」
筋肉も血管も傷つき、ズタズタのボロボロ。
「それでも巫か! ヤル気を出せ、ヤル気を。」
気合と根性で乗り切るのは、分ティの十八番です。何事もホドホドにネ。
「ん? 赤い。」
鼻血ブゥ。フラフラ、クラクラ。バタン。
「オイ! 起きろ明日。」
応答ナシ。
濃度と威力を高めた闇玉発射を検討していた分ティ、大慌て。この器が壊れたら四つ足に逆戻り。ソレはイケナイ、いろいろマズイ。
『シッカリしろ、傷は浅いぞ』と意味不明の声掛けを始める。
山在のセイと明日は大違い。
明日の脆弱さに嫌気が差した分ティ、狩山にブワンと闇を展開して捜索開始。その結果、闇適合率が高そうな器は全て、社や社憑きに保護されている事が判明。
つまり、どう頑張っても強奪不可能。
「ハァ。生きてるからな、ヨシとしよう。」
鼻血を出して倒れた明日を仰向けにして、首の後ろに細めの丸太を突っ込む。分ティそれ、気道確保?
「ウッ。」
痛いよね。弥生時代に西洋手拭は無いから、丸めた布に変えましょう。そのうちグキッと頸椎、歪んじゃうよ。
「先見や先読が無くても祝なら、そう祝なら何でも良いじゃナイか。うんうん。」
思うような獲物を発見できず、取り込めそうな祝を探す分ティ。紫海胆から山荒らしに変態。とことこプリプリしながら最高の位置を捜索。
背から腰に生えている剛毛は空中線なので、分ティの辞書に圏外は無い。
今は夏。気絶している明日から離れ過ぎると、腹を空かせた熊にバクバク食われてしまう。というコトで人型を取るようにグルグル。
「清め、守りは外す。いや守りは、うん外そう。」
とことこトコトコ。
「水とか風を操るの、イイね。闇の力とか、どうよ。」
トコッ、ぷりぷりリン。
『分ティ』でしたか、テイから切り取られた闇の塊。撒き散らした闇を使って、祝探しを始めましたね。
「止せば良いのに。」
狙いは先見、先読。守りが固くて諦めた。で『祝なら何でも良い』、そう考えたのでしょう。
「さて、ドウしたモノか。」
沼垂神、狭間の守神の仰せです。手は出しません。けれどアレ、霧山に向きましたよね。
「・・・・・・外から一人、強いのが。」
「許しませんよ、とつ守。」
この声は!
「乱雲山、雲井社の祝フクです。」
ゲッ。
「『ゲッ』って何ですか『ゲッ』って。」
早口になった。
「ウッウン。人を裁くのは釜戸社、隠や妖怪を裁くのは雲井社。では祝辺、隠の守を裁くのは?」
・・・・・・。
「雲井社の禰宜、クラです! というコトで、闇の中からこんにちは。言っても良いですか。」
『殺されたくなければ、従え』が、開廷の合図。