12-60 分ティ怒った
御山の外から、とても強い先読の力を持つ子が来る。このまま動かなければテイの闇に取り込まれ、穴という穴から血を噴き出して死ぬ。
今すぐ動いてもテイの闇に取り込まれ、カラカラに干乾びて死ぬ。死んでしまう。
「あぁぁ。」
どうする、どうすれば救える。守れる。
「読まなければ。」
こうしている間にも闇が、呪いが!
タエの力は母から娘へ継承される、とても強い力。
良村でマルと共に育った事で心が安定し、歴代最強となったのだ。ここのつ守の先読とは丸切り違う。
分ティ人が闇玉を打ち上げようと考えた瞬間、先読開始。直ぐに動かなければ、多くの命が奪われると知った。
良村の皆に見送られ、良山を出たタエ。通常なら二十日は掛かるのに、ほんの数時間でラクラク移動。
はじまりの隠神、大蛇神の背に乗ってネ。
「良かった。」
間に合ったわ。・・・・・・狐火って、熱くないのね。
「呪い祝の闇が消えるまで、外に出てはイケナイよ。」
「はい、フサさま。」
日持ちする食べ物をタップリ持たされたし、タラが大袋にギュウギュウ詰めた食べ物もある。甕には大泉で汲んだ水がナミナミと有るし、家の隅には薪が山積み。
暫く籠っても困らない。
出られないのはタエだけなので、何かの時にはタラが外へ。
『何かの時』って何だって? そりゃアレだよ。音とか匂いとか、いろいろ気になるモン。察して!
「良いのが見つからない!」
第三弾、四弾、五弾、六弾、七弾、八弾と連発するも、ウキウキもワクワクもシナイ。
「何で、ねぇ何で。」
イライラぷりぷり。
「オカシイよね。ねぇ!」
誰に聞いているのカナ?
「もう良い、先見で手を打つ。」
第九弾、発射準備開始。
「おやおや。」
諦めが悪いですね。
「とつ守。」
むつ守に声を掛けられ、ゆっくり振り返る。
「はい。」
禍禍しい空を見上げていたとは思えないホド、爽やかな笑顔。
「あの闇、この光で断てるでしょうか。」
六代祝辺の守は指先から光の糸を出し、生物を切断する力を生まれ持つ。
「難しいでしょう。あの闇はテイから切り離されたモノですが、壺に入れられたテイの闇とは何もかもが違います。」
「何もかも、ですか。」
「はい。闇の濃さ深さ、呪いの強さも。」
ゾワッ。
「また強くなりました。」
第九弾、発射。
「とつ守は、その。」
闇の力を持たない守は皆、悪寒が止まらず困っている。なのに、どうして耐えられるのだろう。
「私も今、気付きました。緑豊かな所に居れば、あのように強い闇にも耐えられると。」
にこにこニッコリ。
「おや、また?」
第十弾、発射準備開始。
「怒ったよ。分ティ怒った。」
鼻の穴をプクッと膨らませ、地団太を踏む。それからキッと空を睨み、発射!